目次
きっと一人ではないと感じる
スライド式の窓を開けると空から風がするりと入って来てNanaの髪を揺らしている
「今日は静かですね」
「そうね、じゃ、足りないものを買いに行ってもらおうかしら」
軽いステップで晴れた陽の中へ飛び込んで行った
「わかりやすいところもいいわね」ちょっと微笑ましい光景を見送り今日のブレンドをひと口
「うん、今日にピッタリの清々しい感じに仕上がってるわね」
帰ってこないNanaを気に掛けているところに車が入って来た、が、しばらく出てこない
「車の中でバッグが横になってしまって、転がっちゃって、中々、見つからなくって」
「あら、それは大変」
ドスンとバッグをカウンターに置き、買ってきた物を確認してぶつぶつ言っている
「はぁ~、異次元への入り口はどこにでもあるんですよね」
「これ、どうにかならないかなぁ、背の高いものやパックの物、綺麗に入れられたら良いのに」
確かに、バッグの中でペットボトルや調味料が倒れて当たってしまったトマトの包装が少し、潰れてしまっている
「自分の買い物をする時も、いつも思うんですよね、もっと使いやすいのないかなって」
きっと一人ではないと感じる
「そうよね、ちょっと考えてみようかしら」
トマトが潰れていないか心配そうに見つめるNanaの顔がふわっと明るくなって、それぞれの場所に片付けながら、途中で出会ったカッコいいバイクの話しに話題は変わって行った
「お疲れ様ね、さぁ、これをどうぞ」
「この時間がとっても楽しみなんです」
淹れたての今日のブレンドを嬉しそうに飲むNanaが、また、私の楽しみでもある事に気付いているかしらね
ドアベルの音、常連のお客様のTakaさんとSouさんがご来店
二人はカフェの近くにある会社を兄弟で経営していて、ある事をきっかけに、このカフェに繋がりを持つ事となったのです
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