123rd Episode 『遠くボストンの風に【Think the wind in Boston 】』

ボストンの風
目次

お散歩日和

空気はすっかり冷えて寒い冬の匂いがする朝、窓際の席には陽の光が降り注いでいる

「今日は良い天気ですわね」

「お陽様が当たっている所は暖かいけど、風は冷たいわ」

「ランチまでには少し時間があるから、今の内にRomiさんもコーヒーどうぞ」

「ん~良い香り!これが楽しみで毎日来ている様なものだわ」

「そう言ってもらえると嬉しいですわね、前は毎日の様にNanaがそう言ってくれましたわ」

「Nanaちゃん、元気にしてるかな?会いたいわね、もう随分経つし、オーナーも会いたいでしょう?」

「ふふ、Nanaがアメリカへ発ってからは、Miyuさんもモーニングコーヒーと会社帰りのお疲れ様コーヒーと毎日来てくれているし、常連のお客様も変わらず来て下さるから寂しくないですわよ」

「美味しい!まろやかだけど苦みもあって、コーヒーの味がしっかりしてる感じが好きだわ」

「Romiさんのお好みですわね」

ドアベルが鳴り、Hiroさんがご来店、HiroさんはMonakaとKinakoという名前のワンちゃんのお散歩途中にひと休みで寄って下さる常連のお客様だ

「Hiroさん、今日は良いお天気ですわね、お散歩日和でしょう?」

「そうなんだよ、MonakaもKinakoも喜んで、元気いっぱいさ」

「いい事ですわね、さぁ、どうぞ」

甘く香ばしい香りが辺りに広がりうっとりする様な表情でひと口

「うん、美味い!ホッとする美味しさだよ、オーナー」

「嬉しいですわ、あっ、そうそう、Hiroさんに頼まれていたワンちゃん達のトラベルバッグが出来て来ましたよ」

「それはありがたい!MonakaもKinakoもお気に入りだったからね、嬉しいな」

「ええ、Hiroさんにはいろいろとモニタリングしていただいたり、企画の段階からご協力下さって、お待たせしてしまいましたけど、とっても良い出来栄えですのよ」

「ほう、楽しみだな、丁度、仲間と出掛ける予定があるので、使いたいな」

「今、Haruさんが最終点検してくれてますの、包装したりで、そうですわね、明後日にはお渡しできると思います」

「了解です、じゃ、また、散歩の時に頂きに来ます」

「そろそろ、ワンちゃん達が呼ぶんじゃないかしら?」

Romiさんがエントランスの方を覗いて気にしている

「うんうん、コーヒーも頂いたし、良い知らせも聞けたから行こうかな」

「いつも寄って下さってありがとうございますね」

「オーナーもNanaちゃん、早く帰って来るといいですね」

「ふふ、みんなで、Nanaの事を言って下さるのね、私は別に大丈夫なんですけどね」

Romiさんが両手を上げて首をすくめるジェスチャーをする

「あはは、みんながNanaちゃんの影響を受けてるんだね」

かわいいワンちゃん達と日差しの中を小走りに去って行く後ろ姿を見送って、ボストンの風はどんなだろうと思う

「ねぇ、オーナー、ボストンはここより随分寒いみたいね、風邪とかひいてないかな」

「そうねぇ」

時折頬に当たる風の冷たさに首をすくめて、遠くボストンの風に思いを馳せるオーナーKeiなのでした

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