得意の聞こえないふりだ
看板には臨時の営業時間のお知らせがアナウンスされている
「もうお花の準備は出来てるからね」
「Katsuさん、ありがとうございます、Nanaは今日はいつもより遅めの時間で来る事になってますから」
「うん、わかってるよ、サプライズだろう?Nanaちゃんの好きなお花をそろえてあるからね、楽しみだな」
斜め向かいのお花屋さん、Katsuさんはカフェの花壇の管理をしてくれている、毎朝、Nanaはそのお手伝いを楽しみにしている
ドアベルが鳴り、次々と準備に仲間が集まってくるカフェケイズ
カフェケイズのイベントやバッグコレクション、メニューなど企画の仲間が最初に到着
Haruさんは大手デパートの敏腕バイヤーで海外、国内と飛び回るすごい人
「飾りつけにいいデコレーションがあったから持って来たんで、使って下さい」
「あら、素敵じゃない?さすが、Haruさん、何でもそろうのね」
「この手の事なら任せて下さいよ、Miyuさん」
食品会社を経営し、オープンカーで颯爽と行くカッコイイ女性、Miyuさん、オーナーKeiにとって姉の様な存在、今日のパーティー全食材の提供はMiyuさんだ
そして、エリート広告マンのShintaroさんとRenさん、スマートなイケメンで、見るからにモテそうな二人
「ShintaroさんもRenさんもお休みなのにすみませんね」
「いえいえ、オーナーはお料理の方でお忙しいでしょう、会場作りはこちらでやりますから、ねぇ、Renさん?」
「私はお料理も得意なんで、オーナーのお手伝いをしたいところなんですけどね」
「あはは、それは女性陣におまかせしましょう」
「Ren君、相変わらず、オーナー大好きなんだねぇ」
「Miyuさん、そんな大きな声で言わないで下さいよ」
皆の笑い声が聞こえて楽しい雰囲気が漂っている
「Romiさん、ランチはもう終わりだから、少し帰って休んでらして」
三軒隣の手芸用品店のRomiさんは、オーナーKeiの幼馴染でランチの時間のみ、毎日お手伝いに来てくれている
「大丈夫だけど、入れ替わりで母と叔母が来る事になってるからさ、ちょっとだけ帰ってくるわね」
間もなくして、ToyoさんとFujiさんがお手伝いに駆けつけてくれた
「来たわよ、何から手伝おうかね」
ToyoさんはRomiさんのお母さん、オーダーメイドの洋品店を経営していたが、今は手芸用品店としてRomiさん、妹のFujiさんに任せ、Toyoさんは洋裁教室を開いている
ケイズコレクションのバッグ制作にも相談役としてご協力を頂いている
「Toyoさん、Fujiさん、ありがとうございます、お料理のメニューは考えてあります、いくつかは下ごしらえしてありますからちょっと見て頂けますか」
「わかったよ、オーナー、Fujiさんキッチンへ行こう」
「そうだね、どれどれ、メニュー見せてもらおうか」
「こんにちは、もう、始めてますね」
「来て下さったんですか?ありがとうございます」
カフェの裏にある自動車部品加工の会社を経営している社長のTakaさんと副社長のSouさん、真面目で穏やかな人柄のご兄弟だ
「おぉ、Takaさん、心強い助っ人が来てくれた、ちょっとプランター動かしたいんだけど、手伝ってくれるかい?」
「Katsuさん、お久しぶりですね、どれを移動しますか?」
「私も手伝いますよ」
「Souさんも頼むよ」
「あら、飾り付けも随分進んだわね、素敵じゃない?」
足りない材料を調達に出ていたMiyuさんが帰って来た
「あ、Miyuさん、ちょっとこっち手伝って下さいよ」
カウンターに座りコーヒーを飲み始めたMiyuさん
「あ~、また、得意の聞こえないふりだ」
どっと笑いが起こる
「皆さん、いいかしら?そろそろ、ひと息ついて下さいな」
「はい、ありがとうございます」
「カウンターにコーヒー淹れましたからセルフですけれど、ご自由に飲んで下さいね」
慌ただしく準備に動く人々に、小さな安らぎを感じさせるHaruさんとMiyuさんのやり取りなのでした
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