すっごく綺麗な色
お客様がお帰りになると、さっきまでの笑い声や食器を置く音がピタリと消えて嘘の様に静かになる
「あら、もう時間ね、電気消してくれるかしら?」
「はい、ついでに裏のゴミ出しの準備して来ますね」
ドアベルが鳴り、Shintaroさんがご来店
「あら、Shintaroさん、お疲れ様ですわね」
「まだ、食べるものいいですか?」
「お食事まだでしたの?ランチのロールキャベツとキッシュの残りがあるのでそれで良いかしら?温めるだけですぐに出来ますわよ」
「はい、お願いします」
「さ、どうぞ、お仕事、忙しかったんですの?」
「ちょっとギリギリで変更が入って対応に追われていました」
「そう、大変ね、そうそう、Nana、楽しかったって喜んでいましたわ、それにお土産まで頂いてしまってありがとうございました、美味しかったですわよ」
「いえ、お礼なんて、私も良い気分転換になりましたから」
「あの、Renさん、何か言ってました?」
「Renさんですか?ん~別に何も、特には話していませんが、何かありましたか?」
「いえね、今日、近くの企業様のお仕事帰りにいらしたの、それでね、カウンターの上で開いていたお土産のお菓子を見てNanaとのデートだってばれちゃったんですの」
「会社に持って行ったのと同じお菓子だったからか、あ~気が付かなかったな、別のお菓子にすれば良かったですね、それに今日、Renさんがこっちに来るとは聞いていなかったしな」
「その時にね、Shintaroさんは社内や客先でも人気があるから心配だろうって、みんなに彼女がいるからって言ってあげようかって、RenさんがNanaに言ったものですから」
「あはは、Renさんってそんな事言う人だったかな」
「それで私がフォローのつもりで言っちゃったんですのよ」
「ん?何をですか?」
「あのね、ごめんなさいね、Nanaに夢中なのはShintaroさんの方だからご心配なくってね、そしたら後からNanaに怒られちゃって、私、フォローとか苦手なんですのよ」
「そういう事か、いやいや、ありがとうございます、大丈夫ですから心配しないで下さい」
裏の片づけを終えたNanaが戻って来た
「あ、Shintaroさん、来てたんだ」
「うん、ちょっと仕事で遅くなって、今、夕飯頂いてるんだ」
「え~そうなの?お腹空いたでしょう?お疲れ様です」
「あら、いつもより優しいじゃない?Nana」
「え?そうですか?てか、私、いつもそんなにShintaroさんに優しくないですか?」
「そうじゃないけど、私の考え過ぎかしら、ねぇ、Shintaroさん?」
「まぁ、どう答えていいのかなぁ、あっ、そうそう、これ」
可愛らしい箱をカバンから取り出してNanaへ
「ん?私に?なんだろ、開けていいの?」
「うん、今日、食器関係を扱っているお客さんの所へ行ったんだけど、そこで綺麗なグラスを見つけてさ」
「わぁ、すっごく綺麗な色、ねっ、オーナー、素敵ですよね」
「ホントね、綺麗な色ね」
「海辺のカフェでブルーのグラスを見て、こういうのが欲しいって言ってただろう?」
「うん、欲しかったの、こういうの」
「もらっていいの?」
「もちろん」いつもの爽やか過ぎる笑顔で答えるShintaroさん
「ありがとう~~~Shintaroさん、嬉しい」
「ほら、Nana、そういう時ですよ」
「え?何が?」
手を広げてハグをするようなジェスチャーをしている
「もう、何言ってんですか、最近のオーナー、Miyuさん的過ぎ」
Shintaroさんが爆笑している
「NanaがShintaroさんにプレゼントしたり、色々してるのは見た事ないし、お土産だってね、やっぱり、Shintaroさんの方が優しいんじゃないかしらね?私のフォローもまんざらでも無いと思うわ、ねぇ、Shintaroさん?」
「もしかして、今日のRenさんの件、話したんですか?」
「そうよ、いけなかったかしら?」
「別にいけなくはないですけど、Shintaroさんをからかったりしないでって言ったんだけど、もし、何か言われたらごめんね」
「そう言えば、俺の方を見てニヤニヤしていたな、でも何も言って来なかったよ」
「そっか」
「あぁ、美味しかった、ご馳走様でした、特にこのロールキャベツ、さすがです」
「そう?そう言って頂けると嬉しいですわ、さっ、食後のコーヒーどうぞ、Shintaroさんの好きなブルーマウンテンですよ」
柔らかく、でもコク深い香りを楽しみながら、ひと口
「やっぱりオーナーのコーヒーは最高ですね」
「そう?ふふ」
「もう~なんだかな、ん~やっぱりお礼のハグする、でも、後で」
大爆笑しているShintaroさんとオーナーKeiを横目に食器の片付けをするNanaなのでした
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