海辺のカフェでも行こうか
蒸し暑い夏の夜、遠くに大通りの車の音がして、カフェの駐車場はすっかり暗闇に包まれている
いつもは何とも思わないのに、今日は少し心細い感じがする
「膝は大丈夫?まだ痛む?」
「曲げると少し痛いかな、普通にしてたら大丈夫だけど」
「そっか、運転して痛くない?」
「ん~痛いっていったらどうする?運転してくれる?」
「いいよ、ぶつけるかもしれないけど」
「それは困ったな」
「大きな車、運転した事ないもの、でも、痛むなら」
「大丈夫、大丈夫、Nanaが元気ないからちょっとふざけてみただけ」
「そう?元気無いかな」
「色々あって、疲れたんだろう?」
疲れているのか、いないのか自分でもよくわからなかった、が、あまり頭が回っていないのはわかる
「どうした?」「どうもしないよ」
信号待ちで停まる度に、Shintaroさんが心配そうにこちらを見ているのがわかる、でも、顔を向けずに気のない返事をするとまた走りだす
「明日、どこへ行きたい?行きたい所ある?」
「ん~どこも行きたい所は無いよ、だから、明日は無理しなくていいよ」
「どうして?」
「Shintaroさんだって、せっかくの休日なんだから休まなきゃ、いつも遅くまで仕事してるし」
「俺の心配ならいいよ、家でゆっくりしたい?Nanaが行きたくないっていうのなら止めるけど?」
あっさりそう言われるとちょっと寂しい気持ちになる
「よし、じゃ、海辺のカフェでも行こうか、市場調査を兼ねてってのどう?」
「うん、いいよ」
「少し遅めのランチを楽しむくらいの時間にしようか、朝はゆっくりで」
「膝は大丈夫かな?あまり遠くじゃなくて近場にしよう?」
「大丈夫だけど、近くでゆっくりする事にしようか」
「Shintaroさんも疲れているのにありがとう、気を遣ってくれて」
微妙に間が空いて静かな時間が流れる
「珍しいな、そんなに優しいと調子狂っちゃうから」
「え~いつもありがとうって思ってるよ?それとごめんねって両方」
「どうしてごめんね?」
「わかんなかったらいいや、秘密にしておく、ウフフ」
「ウフフって、なんだ?それ」
そう言っていつもの爽やか過ぎる笑顔を向ける人、完全に勝ち目はないんだなって思って、なぜか遠く感じてしまうのでした
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