75th Episode 『その笑顔には適わない【No match for your smile】』

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海辺のカフェでも行こうか

蒸し暑い夏の夜、遠くに大通りの車の音がして、カフェの駐車場はすっかり暗闇に包まれている

いつもは何とも思わないのに、今日は少し心細い感じがする

「膝は大丈夫?まだ痛む?」

「曲げると少し痛いかな、普通にしてたら大丈夫だけど」

「そっか、運転して痛くない?」

「ん~痛いっていったらどうする?運転してくれる?」

「いいよ、ぶつけるかもしれないけど」

「それは困ったな」

「大きな車、運転した事ないもの、でも、痛むなら」

「大丈夫、大丈夫、Nanaが元気ないからちょっとふざけてみただけ」

「そう?元気無いかな」

「色々あって、疲れたんだろう?」

疲れているのか、いないのか自分でもよくわからなかった、が、あまり頭が回っていないのはわかる

「どうした?」「どうもしないよ」

信号待ちで停まる度に、Shintaroさんが心配そうにこちらを見ているのがわかる、でも、顔を向けずに気のない返事をするとまた走りだす

「明日、どこへ行きたい?行きたい所ある?」

「ん~どこも行きたい所は無いよ、だから、明日は無理しなくていいよ」

「どうして?」

「Shintaroさんだって、せっかくの休日なんだから休まなきゃ、いつも遅くまで仕事してるし」

「俺の心配ならいいよ、家でゆっくりしたい?Nanaが行きたくないっていうのなら止めるけど?」

あっさりそう言われるとちょっと寂しい気持ちになる

「よし、じゃ、海辺のカフェでも行こうか、市場調査を兼ねてってのどう?」

「うん、いいよ」

「少し遅めのランチを楽しむくらいの時間にしようか、朝はゆっくりで」

「膝は大丈夫かな?あまり遠くじゃなくて近場にしよう?」

「大丈夫だけど、近くでゆっくりする事にしようか」

「Shintaroさんも疲れているのにありがとう、気を遣ってくれて」

微妙に間が空いて静かな時間が流れる

「珍しいな、そんなに優しいと調子狂っちゃうから」

「え~いつもありがとうって思ってるよ?それとごめんねって両方」

「どうしてごめんね?」

「わかんなかったらいいや、秘密にしておく、ウフフ」

「ウフフって、なんだ?それ」

そう言っていつもの爽やか過ぎる笑顔を向ける人、完全に勝ち目はないんだなって思って、なぜか遠く感じてしまうのでした

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