64th Episode 『過去に縛られる【Behind the past 】』

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やっぱり最強だよ

「どこか、行く?」

「どこかって?」

「いや、どこって、ん~」

「いいよ、このままで、走りながらでも」

「じゃ、どこか停めよう」

視界が開けて、街から港へと続く夜景が綺麗な橋を渡る

「全然違うけど、ここも綺麗でしょ?」車を止めてライトを消すと目の前に広がるキラキラと揺れる光

「違うって、アメリカの橋から見る、あの夜景って事?」

「うん、駄目かな?」

「駄目じゃないけど、別にそんな、夜景が綺麗な所とかって気を遣わなくてもいいよ」

「ありがとうな、さっき」

「え?」

「うん、ありがとう」

「ありがとうって言われる様な事してないし、てか、元は私が原因を作ってるんだから、私がごめんなさいでしょ」小さなため息をつくと静かな時の中で聞こえる港の音

「しっかし、下手な芝居だったなぁ、Miyuさんやオーナーはきっとお見通しだろうな」

「はぁ…そうだと思う、でも、あんな風に全てを察して、受け入れてくれるからやっぱり最強だよ」

「あはは、最強か、そうだな」

「うん、何て言っても元母と元叔母だし、それに、その内、元叔母の従妹のHaruさんが加わりそうで怖いよ」

「そうだな、あの辺、親族だからな」

「うん、私が弱いからいけないんだ、だから、Miyuさんやオーナーに心配させてしまって、わかってるんだよ、私達は共に戦う同志だもんね、頭ではわかってるんだけど、なんでなのかな、よくわからない」

優しい音楽が流れる二人の空間に押し流されそうになる

「いや、Nanaは悪くないよ、弱いんでもない」そう言ってNanaの方に向きなおす

「彼女の記憶が戻ったかどうかは知らない、ただ、彼女の妹がやったんじゃないかと思ってるんだ、こんな風になったのは俺のせいだって」

「妹?」

「うん、仲の良い妹がいて、退社してアメリカに行く前に会った事がある」

「そうなんだ」

「その時、精神的にかなり不安定な彼女を放って行くのはやめて欲しいって泣きつかれた」

「そっかぁ」

「でも、断った、最初から自分の意志は伝えてあったし、そんな理不尽な事って思っていた」

「ん~辛いよね、本人以外の特に妹とかに言われるとさ」

「ちゃんと会って話しをするべきかどうかと思っていたんだ、それがきっかけで記憶が戻るのもどうかと思った、今、彼女は別の人生を歩んでいるんだし、それはお互いに、そうだろう?今更って思っていたんだ」

「そうだよね、もし、妹がやったんだとしても、本人は記憶が無いんだから知らないだろうし、でも、何年も経って、そんな事する意味あるのかな」

「それが、たぶん、鍵なんだ、持ってるんじゃないかと思う」

「うそ、ホント?そうなの?あの、例のもう一つの謎の鍵ね」

「Nanaには話していなかったけど、前世で小さな頃からよく知っている人なんだ」

「え?そうなの?オーナーが私が弓で射られた時、兵士の中に女性がいたって、その人は刀ではなく弓を持っていたって言ってた、たぶん、Shintaroさんが振り向いた一瞬に見たのがその人だったんじゃないかって」

「聞いていたんだ、王妃様は見ていたんだな、Nanaは見ていないって知ってたからさ、きっと振り向いて一瞬見たのは俺を切った人だと思っているって」

「うん、そうだよ」

「彼女は家が隣だった、そこは当時、有名な大きな商家で、そこの娘だった、歳も同じで子供の頃からよく一緒に遊んでいた」

「そうかぁ、幼馴染って事ね」

「うちは武家だし、段々、剣術や、武術の訓練で忙しくなって少しずつ世界が違って行ったけど、彼女はよくその練習を見ていた」

「うん」

「彼女は彼女で商家を継ぐために色々、学ばないといけないって忙しそうにしていたけど、ある日、馬に乗りたいから教えてって言ってきたんだ、一度、馬に乗せてあげた事があったから」

「そうなんだ」

「その時に、自分にも護身に使うから武術を教えて欲しいって言われたんだけど、そんなに簡単には行かないからね、そしたら、弓だけでもって言うから、しばらくの間、毎日少しの時間を使って練習して腕を上げて行った、弓を教えたのは俺なんだ、それが、結果的にはNanaの命を奪う事になった」

少しかすれた声が悲しみを伝える、そんな横顔を見るのが辛くて窓を少し開けると、ひんやりした風を感じる

「ねぇ、Shintaro、ちょっと外に出よう?」

「ああ、そうだね、気持ち良い風が吹いてる」

「私達、ちょっと過去に縛られ過ぎているんじゃない?しかも前世という遠い、遠い、記憶という過去に」

「そう、かもしれないな、さっきの呼び方、懐かしいな」

「アメリカにいた時はそう呼んでいたよね、あの頃は、今が、ずっとずっと遠い先の事の様にも思えていたから、もっと、気楽に過ごしていたな」

「確かに、俺もどこか現実とは違う世界の話しとして見られていたというか、アメリカにいたせいかな」

「ちょっ、なに?」

「いいじゃん?同志だって手ぐらいは繋ぐ事あるだろう?」

「ないよ?それに気持ちが昔に戻っていってしまいそうになるよ」

「そうか…それだけじゃ止まらなくなっちゃうかもしれないしな」

「うわっ、ちょっと、爆弾発言じゃん?てか、目がやらしいよ?」

「あっはっはは、まじで、うけるよ」

港から流れてくる潮風に包まれて、ちょっとだけ、アメリカにいた頃に戻った様な解放感に心癒される二人なのでした

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