絶対、何か隠してる時?だよね
「うんうん、あぁ、そうなの、わかったわ、じゃ、週末にね、はい、気を付けてね」
「出張かしら?」
「日帰りでね、でも今、高速が渋滞してて何時になるかわからないって」
「大変ですね、帰りは夜中になってしまうかもしれませんね」
「明日ならって言われたけど、明日はさ、ちょっと予定入ってて私がいないのよ、だから今週末にでもって事で」
来られなかった事に少し、ホッとしている様にも見えるNanaの表情が、複雑なのであろう事態を予測させる
「あ~お腹すいてきちゃったわ」
「そうですね、何か軽い物を用意しましょうね、Nanaも食べるでしょ?」
「はい、お願いします」
少し、話し疲れたNanaと、少し、モヤモヤ感が残るMiyuさんと、少し、Shintaroさんが何ていうのか不安なKeiの静かな夜が戻って来て、壁時計が時刻を告げる
「じゃ、また、週末に来るわね」Miyuさんがお帰りになる
「ささっと片付けて、軽く掃除して終わりましょうね」
カフェを後にしたNanaは少しの、いえ、いっぱいの後悔を感じていた、先に断ってからの方が良かったと思っていた
「あれ?え、どうして?」Nanaの自宅の駐車場に見慣れた車、咄嗟にスピードを上げて通り過ぎる
「困ったな、どうしよう、取り敢えず、近所のコンビニに寄って何か買おうっと」
レジに並んでいると後ろから聞こえる声
「そのお菓子、好きだよな」
「うん、これね、つい買っちゃうんだよね、って、えぇ?」
「さっき通り過ぎたよね?」
「ん?う~ん、コンビニに寄るつもりで忘れたから」
「そう?声が裏返ってるよ?慌てて逃げて行った様に見えたんだけど、違う?」
「いいえ、違います」
「ってなんで敬語?そういう時って絶対、何か隠してる時?だよね」
「いいえ、隠してません」
「ぷっ、ほら、また、何かあった?Miyuさんから電話があった時いたんでしょ?」
「ごめんなさい、私…」
「ん?どうしてあやまるの?」
しばらく黙っているNanaをただ、見つめている
「車、二台だから取り敢えず、こっち乗って、少し話そう?」
「いいえ、いいです、ここで」、「いいから」
Nanaの手を引っ張って、ころころと転がるお菓子、しゃがんで拾おうとするNanaが背を向けるのをぼ~っと見つめている、Nanaの心の中がぐちゃぐちゃになっているのが見えるから
お菓子を拾って、蓋を開けて「うん、これは、なるほどね、中々美味いな」
「あっ、勝手に開けないでよ」
「ちょっとぐらいはいいだろう?全部は食べないよ」
「いいよ、全部食べても」
立ち上がって手を引くと力なく、深い悲しみが伝わって来て指が痺れるのを感じる
「大丈夫?少し、シート倒してゆっくりしたら?」
「ううん、大丈夫」
いつもの様に心地よいシートに甘くて爽やかな香り、そして少しトーンを抑えた優しい音楽
(はぁ…どうして、このタイミングでこの曲がかかってるかなぁ)
♪~But bihind the past will make you lost today~
I can feel the fire deep inside even from a distance we can fight, I can see behind your disguise~♪
「この曲ね、歌詞がさ、そのまま、ん~色々とね重なるんだよね、だから探したんだ」
「そうなんだ、私も」
「あはは、そうだったんだ、少し落ち着いた?もう遅いから帰ろうか、ん?うそ、泣いてるの?」
「は?そんなわけないでしょ」
「だよな、Nanaは泣いた事なんてないもんな、ウソ泣きはたまにするけど」
「感じ悪~い」
バックミラーを見ると、後ろから付いて来るのが見える、駐車場に車を停車して、部屋に入るのを見てから去って行く
いつもは嬉しかったけど、今日は凄くそんな彼が嫌だった…

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