人それぞれ
午後から雲が多くなってどんよりとしている、明日は雨が降りそうな空模様
「朝は少し御陽様が出てましたよね」
「そうね、夜になると降って来るのかしらね、それとも明日かしら」
「ランチのメニュー片付けますね」
「もうそんな時間?あら、珍しく今日はKonさんいらしてないじゃない?」
「そうなんですよぉ、ちょっと気になっていて、心配なんですよね」
「毎日いらっしゃるお客様ですものね、気になるわ」
ドアベルが鳴り、常連のお客様、Masuさんがご来店、Masuさんは大通りに面した自動車屋の営業さんだ
「あら、今日は少しお早い時間ですわね」
「そうなんだよ、今日はねこの近くにお客さんがいてね、車検の車を取りに来たんだよ」
「そうなんですね、お疲れ様ですわね」
「私ももうすぐ車検だった、Masuさんに頼もうかな」
「ああ、是非、うちでお願いね、Nanaちゃん」
「代車どんなの出してくれるのかなぁ~」
「わかったよ、いいの出すからさ、ちゃんと取りにくるし」
「いいよ!じゃ、Masuさんとこにする」
「あらまぁ、早いわね、商談成立ね」
「来月だからね、忘れてたら言ってね、Masuさん」
「任せておいて!」
深いコクとフルーティーな甘い香りが広がって行く
「いい香りだな、もう、会社へ帰りたくなくなるよ」
「ふふ、そんな事おっしゃらないで、頑張って下さいな、さぁ、どうぞ」
Masuさんはいつもコーヒーの香りを掌で扇ぐ様にしてす~っと吸い込んでいる
「あぁ、毎日でも飽きないね、オーナーのコーヒーはホントに香り高い」そう言ってひと口
「く~、美味いね」
「Masuさんはいつも美味いって言う前にく~って言うよね~ビールみたい」
「あはは、そうかい?美味しい物を飲んだり、食べたりすると自然に出ちゃうんだよ」
「どんな風に飲んで頂いても宜しいんですのよ、人それぞれコーヒーの好みが有る様に飲み方もね」
「さすが、オーナーはわかっていらっしゃる」
「そうですね、ここで色々なお客様に出会うけど、皆、それぞれ、本当に色んな事を教えてもらってますよ」
「おっ!いい心がけだね」
「いつも営業の途中でさぼって、カフェでお茶飲んでるとか、隣の不動産屋の跡取り息子と土曜日は仕事とか言ってゴルフ行ってるとか~」
「いや~こりゃ、まいったな、あははは、Nanaちゃんには勝てんなぁ」
「これこれ、Nana、そのくらいにね」
「まぁ、確かに世の中を見るという事はそれなりにためになるさ、なぁ、Nanaちゃん、あっははは」
時にはヒヤヒヤしながら、でも面白くて思わず吹き出してしまういつものやり取り、勘の良さと機転が利く会話
カフェの常連のお客様から人気があるのはNanaのこういう所なのかしらね、と思うKeiなのでした
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