魔女の密談
「ねえ、来週だったよね?打ち合わせ」
「ええ、そうですね、最終サンプルが出来上がってくるって聞いていますけど」
「そう、じゃあ、Ren君も来るわよね」
「と思いますけど?何か?」
「あ、いや、ちょっとね、聞きたい事があってさ、どうしようかと思って、あ、仕事とは直接関係ない事なんだわ」
「へぇ~なんだろ?気になるね」
人柄を表す様に優しくドアベルが鳴る
「あら、Katsuさん、いらっしゃいませ、珍しいですね、この時間に」
「新しいプランターでいいのが入ったから持って来たんだよ、出窓のプランターを変えようと思ってね」
「いつもすみませんね、ありがとうございます」
「今日は外の分を変えていくからね、後は来週、持って来るけど、カフェの中から変えないと行けないのだからお客様の邪魔にならない時間帯にくるね」
「お気遣いありがとうございます、終わったらコーヒー飲んで行って下さいな」
「ありがとう、しかしなぁ、今日はカウンター席に座るのが怖いなぁ、魔女の密談でもあるのかな」
「何をおっしゃいますか、お仲間に入れて差し上げますよ」
「まいったな、こりゃ」
「あらぁ、こんなに優しくて美しい女性が3人もいるのに、それとも気おくれしちゃうのかしらね」
今日は珍しく、Miyuさん、Haruさんがお休みの日にコーヒータイムを楽しんでいる、そこにオーナーが加わってカウンター席は最強のオーラで包まれているのだ
「いや、退散しますよ、じゃ、外のプランター変えて行くからね、後で見ておいて」
ドアベルを鳴らして、大きなバッグを抱えたNanaが丁度帰って来た
「あ、Katsuさん、いらっしゃいませ、プランター外に置いてあったよ、変えていくの?」
「Nanaちゃんお帰り、買い物かい?」
「ちょっと足りない食材を買ってきてもらったんですよ」
「ああ、重たい」
どさっと大きなバッグを置いて、相変わらず何やらブツブツと言っている
「もう、また、ぐちゃぐちゃになってる、はぁ…冷蔵庫に入れる物だけ、先にいれないと、あ、そうだ、Katsuさん、これ終わったらお手伝いしますね」
「ありがとうね、Nanaちゃんは優しいなぁ、でもすぐ終わるからいいよ」
「私が冷蔵庫に入れておくからいいわよ、いってらっしゃいな」
喜んで外へ出て行く姿を見て、カウンターの魔女さん達が顔を見合わせてくすくすと笑う
「ねえ、そんなにここに居たくないのかしらね、私達が取って食う訳じゃあるまいし」
「まぁ、何と言われようが席を譲る気はないんだけどさ」
「誰も怖くて言えないんじゃないの?」
「あはは、私は怖くないわよぉ、Miyuさんが一番怖く見えるんじゃないの?」
「あっははは、その言葉、そっくりHaruさんにお返しするわ」
「それよりさ、何よ?Ren君に聞きたい事って」
「ああ、あのさぁ、うちの社員の子からちょっと聞いたんだけど」
「うんうん、デパートの売り場の子?」
「そう、色々な女の子と噂があるらしくってさ、どう思う?」
「色々って何人もって事?」
「うん、まあ、中々のイケメンだからさ、前からうちの女子社員には人気があったみたいなんだけど」
「でも、Ren君にとっては一応お客様でしょう、そこで手は出さないじゃなの?普通」
「うーん、うちの子たちが勝手に騒いでいるだけとは思いにくいのよね、名前も上がって来てるから」
「でも、HaruさんがRenさんに直接、お話しすると社員さん達が困らないかしら?」
「そうだよね、実名が上がってるんなら社員に先に聞いた方がいいんじゃない?それか、Shintaro君に聞いてみたら?」
「そうね、Miyuさんのいう通りかもね」
「夜さ、Shintaro君、来るでしょう?私、今晩来て聞いてみてあげようか、帰り道だし」
「あら、Shintaro君、夜も来るの?」
「ええ、最近はね、夜いらっしゃるんですよ」
来週、最終サンプルが出来上がって来るのは嬉しいが、その打ち合わせは何やらひと悶着ありそうな予感
少し前、カフェの帰り道でNanaの後をつけたり、追いかけられたりした事件があった
NanaはRenさんだと思い込んでいるが本当にそうなのか、私も直接聞きたい、そう思うKeiなのでした
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