側溝にはまっちゃった
「ちょっと、Nana、どうしたの!一体、何があったの!?」
「すみません、遅くなっちゃって」
「そんな事いいわよ、それより、何?足、怪我しているじゃないの」
「よくわからないんだけど、帰りに後ろから急に誰かがぶつかって来て」
「えええっ!?」
「ちょっと、僕、周辺を見てきます」
「あっ、でも、気をつけて下さいね、無理しないで」
「それが、丁度公園の入り口辺りで、数段の階段になっていて躓いて側溝にはまっちゃったんです」
「まあ、ちょっと、こっちからも血が出てるわ、よく見るとあちこち擦ったのね」
「すぐ、病院へ行った方がいいわ、頭を打ってるかもしれないし 」
「そんな、大丈夫です、そこまでは」
「すみません、ちょっと見当たりませんでした」
「ボクサーさん、すみませんね」
「オーナーの言う通り、ちゃんと病院で調べてもらった方がいいんじゃないかな」
「取り敢えず、ちょっと中へはいりましょう」
「長椅子のところで横になる?それか、奥のソファで」
「ううん、もう大丈夫ですよ、転んだだけですから」
「傷の手当しましょうね、待ってて、救急箱を持ってくるわ、ボクサーさんお願いね」
辺りはもうすっかり暗くなり、雨風が激しくなって来た
「ボクサーさん、ごめんね、コーヒー飲みに来てくれたんでしょ?」
「いあいあ、そんな事気にしなくていいよ、今日はもう帰った方がいいんじゃないか?」
「あ、でもコーヒー飲んで行ってよ」
気分のすっきりしない中、真逆の空気に包まれる、甘く深いコーヒーの香りが広がり心を癒す
「やっぱり、オーナーのコーヒーは最高だね、ねえ、送って行こうか?」
「そうする?もう、今日はお客様も来ないだろうし、少し早いけど上がってちょうだい」
「もう、大丈夫だってぇ、心配し過ぎ~それより、早く帰った方がいいよ、もっと雨が酷くなるよ」
しばらく心配そうな顔で見つめていたが、ちょっと寂しそうに帰って行った
「Shintaroさんに電話するわね」
黙って頷いて痛そうにあちこちを摩っている
イケメンでカッコよくて、完璧に見えるボクサーさんに唯一に足りないのは押しが弱いところかな、それともやっぱりShintaroさんなのかな、そんな事を考えながらパンケーキを焼いた
「わぁ、美味しそう~甘い香りで余計、お腹が空いちゃいました、ちょっと苦みのあるコーヒーにめちゃくちゃ合いますよ」
ハニーとバターと生クリーム、バナナとキウイとブルーベリーを添えてカウンターに出すとぱくぱくと元気に食べ始める様子を見て、少しづつ気持ちも落ち着いて、ホッとするのでした
コメント