オープンカーで颯爽と
明け方まで降っていた雨が上がり、朝の陽が差し込み始めると木々の緑がキラキラと光る
「春も一瞬で過ぎ去っていくわねぇ」
Miyuさんがモーニングコーヒーを味わいながら窓の外を眺めている
「Miyuさん、モーニングコーヒー、はまっちゃったみたいですね」
「そうなのよぉ、あなたの言う通り、良い目覚ましだわ」
「でしょう~?」
「あらあら、朝から仲の良い事」
「オーナーがやきもちやいてますよ~ふふふ」
「さてと、看板出して、ちょっとお花に水をあげてきますね」
「なんか、機嫌いいんじゃないの?」
「そうですね、まぁ、毎朝、あんな調子ですけどね」
「Shintaro君と上手くいってるって事かしらねぇ」
「あの、ね、その事なんだけど」
「ん?違うの?毎晩、お迎え来てるんじゃないの?」
「あ、いえね、そうなんですけどね」
ドアベルが鳴り、プロゴルファーのEisukeさんがいらっしゃった
「おはようございます、ちょっと早かったかな?」
「おはようございます、大丈夫ですよ、どうぞ」
「あ、いや、今日はね、二週間分くらい貰って行きたいなと思ってね」
「あら、もう出発なさるんですか?」
「そうなんだよね、急だけど用意してもらえるかな?」
「もちろんですよ、一杯飲んで行って下さいな、すぐ支度しますから」
「悪いね、急がせてしまって」
「じゃ、私はまた、夕方にでも来るわ、またね」
「あ~Miyuさん、お帰りですか、デリバリーならいつでも行きますからね」
後ろ姿で手を振ってカッコイイオープンカーで颯爽と走って行った
「なんだか、絵になる人だねぇ、映画の様にかっこいいなぁ」
「でしょう?Eisukeさんもそう思います? Miyuさん、いつもあんな感じでかっこいいんですよ」
「Nanaちゃんもオープンカーとか乗りたいの?」
「憧れますけどね、その前にお金貯めないと」
「あはは、そうか、早く貯まるといいねぇ」
「今日は朝から賑やかです事ね」
昨夜の事が嘘の様にまた、今日の違う朝がやって来て、同じではないけれど、同じように毎日が忙しく過ぎて行く
昨夜は意外にも疲れたのかすぐに深い眠りに落ちていた
時間は過去から現在、未来へと続いているけれど、過去の出来事は既に完結している
ドラマみたいにタイムスリップして過去を変えるという感じのお話しではない様だ、が、現在でリベンジ?とでもなるのだろうか?
考えれば考えるほどに頭の中が混乱してしまう
「さ、そろそろ片付けもそのくらいにして上がってね、コーヒー飲むでしょう?」
「はい、もう終わりますよ」
「今日はShintaroさんの好きなブルーマウンテンの新しい豆が入ったから挽いてみたのよ、ストレートで飲んでみる?」
「はい、あぁ、そろそろ来る頃ですね、オーナー?混乱してますよね」
「え、ええ、まあ、そうね、まだ、はてな?だらけでね」
カウンターに腰かけた後ろからNanaが優しく肩を抱きしめた
「大丈夫、私達がいます、ずっとそばで守ります」
いつものNanaはどちらかと言えば子供っぽくてやんちゃな男の子の様な振る舞いだけど、驚くほどに大人の女性を感じる
どちらが本当の彼女なのだろう
ふと気が付くとドアを開けてこちらを見ているShintaroさん、そこにはいつもの爽やか過ぎる笑顔があった
「いやぁ、お邪魔しちゃったかな?」
「そうですよぉ、いいところだったのにねぇ」
「あはは、やっぱりそうかぁ」
「今日はShintaroさんの好きなブルーマウンテンですよ、ストレートだけどいいかしら?」
「はい、頂きます」
「とりあえず、美味しいコーヒーを飲みましょうね、話しはそれからね」
まるで家族の団らんの様に心が落ち着き、安心出来るひと時、ずっとこのまま続いて欲しいと願うのでした
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