これはどういう事?
見上げたそこには、はらはらと舞う美しい花びら、そして、丸く大きな月が夜空に浮かんで辺りを照らす
何とも言えない華やかな香りがくすぐる
「夜風は体に障りますよ、そろそろお戻り下さい」
聞き覚えのある声に振り返るとそこには何やら古めかしいいで立ちの女性
「これはどういう事?」
にわかには信じられない情景、少し意識がはっきりしていない感覚が共存する
「王妃様、どうかなさいましたか」
またもやその女性は理解しがたい言葉を投げかける
すると少し離れたところからこちらへ近づいてくる二人が見える
「そういう事だったのね」
「少々乱暴なやり方で申し訳ありません」
「少し、落ち着いて、中でお話ししましょう」
先ほどから気遣う様にこちらを見ている女性、声に覚えのある女性、その人の顔は良く知る人物
そうか、そうだったのか、根拠は無いが、今、この場にいる数人は私を守る信頼のおける人々なのだろう
促されるままに足を運ぶと、そこは宮中の様な荘厳な建屋の奥の間
「さぞかし混乱されている事と思います、少し、お休みなった方が」
「いえ、大丈夫よ、まだ、驚きと信じられない気持ちとごちゃごちゃになっていますけど」
「当然ですよ、普通には考えられない事ですからね」
「あなた達は一体いつから」
「その辺の話しは長くなりますから、追々お話する事にしましょう」
「王様がご逝去されて混乱が続いています、まずはどこかに身を隠しては」
「身を隠すといっても」
「ご心配なく、私たちがお守り致します」
言われるがままに広い敷地内を歩き、どこまでも続くかと思われた宮中の外に出たところから程なく、大きな屋敷の中に入って行く、そこで待っていた人々に驚き、言葉を失う
急にくらくらと目が回り意識が途切れた
何か、口の中に苦みを感じて目が覚めると薬茶の様なものだろうか、鼻から抜ける香りがほろ苦い
心配そうな顔が額を寄せる様に覗き込んでいる
「お目覚めになられましたか」
「ご気分はいかがですか」
「ええ、大丈夫よ、どのくらいたったのかしら、長い長い夢をみている様だったけど」
「落ち着かれましたか?ここにいる者は皆、王妃様をお守りする者達です、ご安心下さい」
ふと気づくと、手を握りこちらを見つめている誰か
格好はまるで、隠密の様な、顔を隠し目だけが見えているが、しかし、それは誰かを知るのには時間は掛からなかった
そしてほっとした表情を認めたのか、確信したかの様に
「思い出していただけましたか?」
ゆっくりと頷き体を起こすとまだ、頭が痛む
「ええ、でも、まだ、信じられないわ、断片的で繋がらないところもあるけど、たぶん」
「あまり時間はありませんが、もう少しお休みになった方がよろしいかと」
そう言って、また、何か薬茶の様な飲み物を差し出した
次第にぼんやりと何かを思い出した様な気分になり、少し安心して深く眠りに落ちて行くのでした
コメント