未来の子よね
カフェの夜も更ける頃、お客様も一組、二組と扉の向こうへと去って行く
ドアベルが鳴り、Miyuさんが再びご来店
「ねぇ、Nanaは?まだ?」
「ええ、Miyuさん、まだ帰って来てないんです」
「連絡は?無いの?」
頷くオーナーKeiの顔が曇る
「そう、ちょっと遅いわよね、どうしちゃったのかしら」
「携帯に連絡してみたんですけど、出ないんですよ、大丈夫かしら」
「そうね、心配になって来たわ」
「着信があったら必ず連絡はくるはずだし、何かあったとしか思えないんですよ」
「Shintaro君は?あれから来なかったの?」
「ええ、Shintaroさんにも連絡してみようかしら、ねぇ、どう思います?下手に心配かけるのもね、迷っていたんですの」
「そうだよね、でもさ、Jinさんと一緒に行ったって事言ってないでしょう?」
「そうなんですのよ、だから、ちょっと言いにくいってのもあって」
「ShintaroさんにNanaから連絡が入っているとは考えにくいけど、でも、やっぱりちょっと連絡してみようか」
「そうですね」
行動力のあるMiyuさんはもう携帯を出してかけ始めている
首を横に振って「出ない、Shintaro君も出ないわ、どうなってんだろね」
「そうですか、もしかして、あれからShintaroさんがNanaに電話して、何かもめ事にでもなっているんでしょうか」
「うーん、無きにしも非ずか」
コーヒーを淹れる事すら忘れてどんよりしているオーナーKei、こんなKeiは見た事がないと思うMiyuさんは色々と考えを巡らせる
「そういえばさ、昼間の子、若い学生さん?」
「あ、ええ、驚きましたわね」
「うん、あの男の子のオーラ、全くShintaro君と同化してたね」
「ですわね、前に何度か来た時は気が付かなかったんですよ、Nanaもいましたしね」
「それに、Shintaro君ってあんな色だったっけ?最近、変わったというのか、あまり気にしてみた事が無かった」
「私も思ったんです、段々、強さが増してるという気がしてたんですけどね、でも、二人が一緒になるのは初めてなんですよ、それで共鳴している様でしたわ」
「あのこ、未来の子よね、たぶん、Shintaro君の」
だまって頷くオーナーKei
「それと、私ね、前から思っていたんだけど、Nanaね、あの子さ、色出してないでしょう」
「私も思っていました、近すぎて見えなくなっているんでしょうか、初めてぶらりとこのカフェに来た時には見えていたんですよ、しかも煙に巻かれている様なそんな感じでした」
「出さない様にしてる、そういう事がたぶん、出来るんじゃないかと思う」
「そんな事が出来るんでしょうか、Miyuさん」
「普通は出来ないでしょうね、自然の物だから」
「それに、ずっと感じている事があって、どうしてNanaなのかって」
「そうね、よくよく考えてみると、脇役の様であの子から渦が沸き立っている様な感じよね」
「古い記憶の中に王様から聞いた話しがあって、七星の」
オーナーKeiがそう言いかけた時、Miyuさんの携帯が鳴った
「もしもし、Nana?一体、こんな時間までどこにいるの?え?あ、ああ、Shintaro君、ごめんなさいね、ちょっと大声出しちゃって、ええ、そうなのよ、うん、うん、わかった、じゃね」
「さっきShintaro君に電話したの忘れちゃってたわ」
「Miyuさんったら、最近、変わりましたわね」
「あの小娘に振り回されるなんて私もまだまだって事よね」
「元母の姿なのかしら、慌てたり、ぼ~っとしたり、今までの仕事が出来て、常に、冷静沈着なMiyuさんには無かった姿ですわ」
「ふん、何とでも言って頂戴よ、そそ、Shintaro君、今から来るってさ」
「ねぇ、なんて言ったらいいんでしょう?私」
「もう、閉める時間でしょう?Shintaro君が来たら、家まで行ってみようか、遠いところじゃないし」
「ええ、家にいるとは考えにくいけど、それでもね、確認しておきましょう」
Miyuさんにコーヒーを淹れる事を忘れたまま、慌ててカフェの閉める準備をするKeiなのでした
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