な~んか、ややこしいな
お客様の波が途切れたのはもうコーヒータイムも過ぎて、少し薄暗くなった頃
「はぁ~今日はお客様が次から次へといらっしゃいましたね」
「ホントね、お疲れ様ね、少しお掛けなさいな、コーヒー淹れましょう」
「はい、疲れました、ちょっと小腹が空いて来ました」
「頂いたお菓子があるから、こちらもどうぞ」
「美味しそうですね、頂きます」
「Romiさんも来てくれたけど、今日はいっぱいいっぱいでした」
甘く優しい香りが鼻をくすぐる
「あぁ、なんて優しい香り」
脱力した様に肩を落としてひと口
「ふぅ~身体にしみ込んで、私の血液がバーガンディっぽくなってます」
「久しぶりに、その、わけのわからない感想を聞いたわ」
「香ばしさとフルーティーなコーヒーが好みでしょう、酸味は欲しいけど、あまり強くない方がいいんでしょう?」
「まさに、その通りです」
「ふふ、ちゃんとわかってますよ」そう言って優しく微笑む
「ねぇ?オーナー?私に何か言いたい事があるんじゃないですか?」
「まぁ、どうして?」
「だって、私の心を読み取る様なコーヒーですから、何か気になる事?聞きたい事?でもあるのかなって」
なんとも、相変わらずの勘の良さ
「いえね、この前、Jinさんと一緒にお出掛けする様な事になっていたから、どうするのかなって」
「あぁ、空港へ行く話しですよね?行きたいけど、中々、都合が合わないですよね、Jinさんは土日休みだし」
「そうねぇ」
「金曜日なら仕事終わってからでもいいよって言っていたけど、金曜日だと休み前だから夜はお客様多いし」
「え?夕方から?それだと帰りは夜になってしまうわね?」
「ん~まぁ、そうですよね」
「土日にお休みして良いからお昼間で行ってらっしゃいな」
「でも、カフェも忙しいし、Romiさんが来てくれても大変じゃないですか?」
「手が足りなければ、ToyoさんやFujiさんも手伝ってくれるから大丈夫よ」
「ん~じゃ、そうしようかな」
夜になると思うとあの胸騒ぎが再びざわざわと音を立てる、昼間に行く事で少し安心するが、帰りが早いかどうかまではわからない
「夜までにはならないでしょう?早めにお帰りなさいな」
「道が混んでいなければ大丈夫だと思います」
「そうねぇ、心配だわ」
「ん?何が心配なんですか?」
「あら、だって、ねぇ、Jinさんも男性ですからね、それは心配ですよ」
「あ~そういう意味ですね、じゃあ、午前中はカフェに出ます、ここで待ち合わせという事で来てもらって、帰りはカフェに帰って来ます」
「あぁ、そうね、そうしてくれるといいわね」
「はい、夕方、空港線が混んでいて夜になる様なら電話を入れますね」
「そうして頂戴、それなら安心だわ」
「オーナー」
「なぁに?」
「心配してくれてありがとうございます」
「ふふ、当然ですよ、大事なうちの娘、っていうか元姪っ子でしょう?」
「な~んか、ややこしいな、ははは」
「そうね、ややこしいわね」
二人、顔を見合わせて微笑む姿は遠い昔からずっと繋がる深い縁を感じさせるのでした
コメント