お手柄だわねぇ
「おやおや、これは皆さん、お揃いで、どうしたんですか?」Shigeさんが目を丸くして廊下の自販機の前に立っている
「Shigeさん、やっぱり夜勤だったんだ、良かった、いてくれて」Nanaが駆け寄る
「Nanaちゃんどうしたの?あっ、何か飲む?」
「じゃ、ん、どれにしよっかな」
お金を入れると、自分で好きなのを選びなさい、と目で促すShigeさん
「ありがとうございます」Nanaは嬉しそうにボタンを押す
「まぁ、Nanaったら、Shigeさんすみませんね、お金払います」
「いいんだよ、Nanaちゃんは娘みたいなものだからね、いつも楽しい時間をもらってるお礼だよ、オーナーはいいの?他の皆さんは?」
「いえいえ、大丈夫です、お気遣いありがとうございます」
「ところでどうしたの?誰の付きそい?」
「あの、カフェにいらしたお客様なんですの」
「ああ、そうか、んじゃこっちへ入ってもらおうか」
「Shigeさん、休憩中?いいの?」
「ん、まぁ、そういうわけでもないんだけどね、今夜は静かな夜なんだ」
しばらくするとSakiさんが手に包帯を巻いて処置室から出て来た
「大丈夫ですか?Sakiさん」
「はい」
「あれ、Nanaちゃんもおでこに絆創膏か?」
「私は自分で転んだんだからいいの、絆創膏で治るの」
「ちょっとみるよ?」貼ってある絆創膏をぺろっと剥がしてじっと見る
「ん、ま、いいか、ちょっと消毒して軟膏でも塗っとくか、あ、ほら、そこの君、背の高い青年、君もおいで」キョトンとしているShintaroさん
「君の方が傷が深そうだよ、滲んでる、ちょっと手当しておこう」
オーナーKeiが思いのほか傷が深いと言われて、心配そうな顔をして一緒に入る
「何があったか知らないが、まぁ、穏やかにね、さっきの方は少し縫っておいたよ」
「お手数をおかけしてすみません」全てお見通しの様なShigeさんの視線に戸惑いながら小さく答える
「いやいや、さ、これでよしっ、おてんば娘、軟膏出しておくから」
「あ、来た来た、もう終わったの?」Sakiさんに付き添っていたMiyuさん
「あれ?Nanaちゃん、この前のカッコイイ、オープンカーのお姉さんじゃない?」
「うん、そうだよ、心配して付いて来てくれたの、あっ、私のママみたいな人だから、Miyuさん」
「ほう、そうなんだ」
「どうも、Nanaがいつもお世話になってます」
「いやいや、こちらこそですわ」
「なんかな~二人ともニヤニヤしちゃって気持ち悪~い」
「こら、何言ってのよ、失礼でしょ?」
「いやいや、Nanaちゃんの言う通りだ、不謹慎だったな、あっはっは、じゃ、またカフェで是非、お会いしましょう」
「そうですね、是非、お食事か、お酒もいいですね」
「あっははは、光栄だなぁ」
「げげっ、大胆発言だ、連絡先でも交換する気?やめてよね」
「じゃ、また」
病院の玄関口に停まっていたタクシーを見るとSakiさんはタクシーで帰ると言って乗り込んだ
去り際に、改めてお話しをする機会をお願いしますと言って頭を下げた
「今回はNanaのお手柄だわねぇ、じゃ、私も帰るわ」いつもの様に颯爽とオープンカーで去って行った
「ふ~ん、何がお手柄なんでしょうかね~Shigeさんに会えて上機嫌だし」
「ふふ、嬉しそうでしたわね、さっ、私達も帰りましょうね」
「そうですね、一旦、カフェ戻っていいですか?私カウンターにバッグ置いて来ちゃった」
「そうね、いい?Shintaroさん、その後、Nanaを送ってくれるかしら?」
「はい、もちろんです」
「いいよぉ、私、今日車あるし」
「そんな事言わないで、それから、明日はお休みしてもいいから、ゆっくりしなさい」
「え?だって、日曜日はカフェ忙しいですよ?」
「さっき、Romiさんに事情を話してお願いしておいたから心配しないで」
「そうさせてもらった方がいいんじゃないか?」
「じゃ、Shintaroさんお願いね、たまにはちょっと遠くまでドライブにでも連れて行ってあげて下さいな」
「え?ちょっと、ちょっと」
「はい、わかりました」
「わかりましたって、なんじゃ、それ?」
話しに付いていけないNanaの手を取って引っ張って歩いく二人の後ろ姿
(こうやって一つ一つ乗り越えていくのね)
それぞれの取り巻く二つのオーラが一つに繋がって行くのを見ていたのです
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