オーナーが女神に見えるよ
じりじりと照り付ける陽の光が眩しくて太陽がどこにあるのかよくわからない空
「暑いですね~お花が辛そうですね」
「朝、たっぷりお水はあげても直ぐに渇いてしまうわね」
「もう少しで私の背に届きそうな向日葵だけが元気そうです」
「ふふ、Nanaが育てた向日葵ね、大きくなったわね」
ドアベルが鳴り、常連のお客様で弁護士のGenさんがいらっしゃった
「暑い、暑い、なんていう暑さだ」
「あらあら、Genさん汗が噴き出していますわよ、こちらの冷たいタオルをお使い下さいな」
「ありがとう、あ~冷たくて気持ちいいね~オーナーが女神に見えるよ」
「ふふ、アイスにします?」
「そうするよ、喉がカラカラだ」
深いコクとほろ苦い香りが広がるとそこだけ別世界の様に時間が止まる
「いい香りだ、もう動きたくなくなるね」
「さぁ、どうぞ、お待たせしました」
「美味しそうな色だね、頂きます」ゴクゴクと喉を鳴らして半分ほどを飲んでしまうGenさん
「いやぁ~コーヒーなのになんて喉越しなんだろう、全部飲んでしまいそうだったよ」
「ちゃんとお替わり分もありますよ、でも少し濃い目なので二杯目はカフェオレにしましょうか」
「あぁ、いいね、そうしてくれる?」
「美味い!オーナーのコーヒーは本当に美味い」そう言って残りのアイスコーヒーもあっという間に飲みほしてしまった
「あ~Genさん、いらっしゃいませ~ってか、早!もう飲んじゃったの?」
「おお、Nanaちゃん、居たのかい?喉が渇いてたから一気に飲み干してしまったよ」
「美味しいでしょう?オーナーのアイスコーヒーって止まらなくなるよね」
「うんうん、濃くて香りもいいのに、ビールの様な喉越しでどんどん行ける」
「そんな風に言って頂けると嬉しいですわ、ありがとうございます」
「二杯目はゆっくり飲まないとだめだよ~お腹痛くなるといけないからね」
「わかってるよ、Nanaちゃん、二杯目は味わってゆっくり頂くとするよ」
「美味しそう~私もアイスカフェオレが飲みたくなっちゃったなぁ」
「いいわよ、少しランチ前に休憩しましょうか、Nanaもどうぞ」
「あっはは、Nanaちゃん、いつもお客さんが飲んでるの見て、飲みたくなっちゃってるだろう?」
「えへへ、そうなんですよね~特に、アイスコーヒーとかは喉がゴクリって感じなんです」
「今、お仕事は忙しいですの?」
「そうだねぇ、何かと忙しくなって来たね」
「弁護士さんのお仕事は大変ですものね、お仕事量が多いでしょう?」
「そうだねぇ、ゆっくり休む暇はないね」
胸の向日葵と天秤が描かれた弁護士バッジがきらりと輝いている、向日葵は自由と正義を、天秤は公正と平等を表しているのだ
「Genさんは弱きを助けて正義を守るヒーローだもんね~」
「Nanaちゃん、それは言い過ぎだよ、やりがいのある仕事ではあるけどね」
「カフェのエントランスにある向日葵は私が植えたんですよ、好きな花なんです」毎日お水をあげながら大切にしているNana
「そうですわね、よくお花のお世話をしてくれてるわ」
「そうだな、向日葵の花は元気が良いNanaちゃんにぴったりだよ!」
「私ね、アメリカの授業で昔、いくつかの項目の中から自分が一番大切だと思うものを選んでそのスピーチをするっていうのがあって、”自由”を選んだんですよね」
「ほぉ、それは興味深いね」
「自由って実は難しいんですよね、自由ってただ、好きに何でもして良いって事ではないですよね、当然、責任も伴うし、選択、言動や色々な事は人それぞれ違うじゃないですか、ちゃんとそういう事に向き合って、考える事がとても大事だと思うんです、そうすると権利とか平等とか正義とかにも考えは及んで行くんじゃないかと思うんですよ」
Genさんが、ちょっと真顔でNanaを見つめている
「ん?どうかしたんですか?」
「いやぁ~ちょっと驚いたなぁ、Nanaちゃんっていつも明るくて元気良いし、どちらかというと能天気みたいな感じだったから、意外にちゃんと考える事もあるんだねぇ」
「え~それ~ちょっとひどいよぉ」ちょっと膨れた顔で横を向く
「あっはは、悪い、悪い、そんなつもりじゃないんだよ、褒めてるんだ」
「そうですわね、Nanaも良い所が沢山ありますよ」
「そっか、ん、じゃ、いいや、オーナーもう一杯お替り下さい」
「あははは、そういう所もいいね!面白い子だ」
相変わらず自由奔放なやり取り、だが、常連のお客様の心を掴む天性のものを持っていると感じるのでした
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