綺麗な鍵ねぇ?
どんよりとした雲が重たく圧し掛かる様な空に星は見えない、そんな夜でもカフェのカウンターには甘く香ばしい香りが立ち込めて、コーヒーを点てる音だけが静かに広がる
「さ、取り敢えず、コーヒー淹れましたよ、召し上がって下さいな」
Miyuさんが、待ちきれなかった様にひと口「うん、今日も絶好調ね、美味しいわ」
「先日はご心配をお掛けして申し訳ありませんでした」
「いいのよ、Shintaro君、そんな事は気にしなくて」
「そうですよ、それに、久しぶりにMiyuさんと美味しいお酒を頂いたしね」
「え?あの後、呑みにいったんですか?」
「そうよ、煩い小娘がいないから大人二人でゆっくりとね」
「あ~いいなぁ、残念」
「本題に入りますが、今回、色々と考えて、MiyuさんとオーナーにはこれからもNanaのそばで助けになって欲しいと思います、なのでご協力をお願いします」
「え?結局、そういう結論?私、聞いてないけど?」
「うん、思い切って話しをしてくるよ、だから、もしかしたら、また、何かするかもしれないだろう?いつも一緒にいられる訳では無いし、それなら、Nanaはカフェにいる時間の方が長い」
「Miyuさんの言う様にもっとエスカレートしていく可能性もありますわよ」
「私、みんなに迷惑かけて、心配してもらって、なんだか申し訳ない気持ちです」
「いや、Nanaが悪いんじゃないから」
「そうね、誰も悪くないわ、Shintaroさんが一番、お辛いでしょうけど」
「そうすると、また、あれ?あの荒行をする気?」大きく目を開いてNanaが見つめる
「荒行?なに?それ?」
「Miyuさん、コヒー飲んでちょっとリラックスして下さい」
「何よ、Shintaro君、そんな真面目な顔して、リラックスしまくってるわよ?」
「じゃ、いいですか?」
オーナーKeiが鍵を取りに行って戻って来た
Nanaがカバンから鍵を出してShintaroさんの手のひらに乗せるとShintaroさんが自分の鍵を取り出して乗せる
「え?鍵?鍵を乗せればいいの?何、これ?何の儀式?」
「いや、そうじゃないんですけど、ちょっと説明するよりこの方が早いと思って」
「あら、どれも古めかしい、でも綺麗な鍵ねぇ?あっ、そうそう、そんなんだったら私もあるわよ、ほら」
「ええええ~~~??」Nanaが椅子から落ちそうになるのをShintaroさんが支える
「Miyuさん、この鍵どうしたんですか?」
「あのね、カバンの外ポケットのループに引っかかっていたのよね」
「まーじーでー!!!?」
「Miyuさん、いつ頃の事ですの?」
「うーん、二か月?いや、もっと?三か月くらい前だったかな、気が付いたのはね、ちょっと小ぶりでアンティークっぽくて味があるじゃない?だから捨てるにも捨てられなくてそのままにしていたんだよね」
「ありがとう!捨てないでくれて、大好き!」Nanaが後ろから思わずMiyuさんに抱き付く
「ちょっと、ちょっと、何よ~?気持ち悪い子ねぇ」
「驚きだな、こんな近くにあったなんて、信じられないけど」
「私は、何となく予感はしていましたのよ、最近、Miyuさんが話す事がNanaの言っている事とよく被るから、もしかして何か知っているのでは?って」
「ねぇ、Miyuさんはこの鍵を手にしても何も起こらないの?何か感じない?変わった事ない?」
「なによ、質問攻めじゃないのさ、変わった事?ん~そういえば、今までには見た事の無い夢みたいなのはあるかな」
「ねね、どんな夢?」
「古い寺みたいな、屋敷みたいな厳めしい建物の中に入って行くのよ、ぼんやりと灯りが点った部屋の前で立ち止まる、とか、妙に月が大きくて月明かりが照らす風景が大昔の様な、お城?宮殿みたいな感じなのよ」
「ああ~それだ、それそれ、やっぱりこの鍵だよ、ね、オーナー?」Keiが頷く
「でも、この鍵単体ではそこまでの効力が無いのかな、やっぱり何かに付随して効力を発揮するんじゃないかな」
「うん、そうだよ、Shintaroさん、きっと、オーナーの鍵と一緒になったら効果があるんだよ、今まで見えていなかった細かい事とかが解明されるかもしれないよ」
何をいっているのかさっぱりわからないといった表情のMiyuさんが三人の顔を見てキョトンとしているのでした
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