60th Episode 『心の奥にある想い【Intimate thoughts 】』

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ここから長くなりますよ

「もう、外の電気も消して、看板もいれましょうね」

「オーナー、この味は、もしかして」

「そうよ、久しぶりでしょう?よく覚えていたわね」

7th sense、Nanaが初めてCafe kei’sに訪れた時に、オーナーKeiがYour Specialとして出したコーヒーだ

「このコーヒーの魔法に掛かってしまったんですよねぇ」

「あの日のあなたは、魂が抜けたようにふわふわしていたわね」

「へ~そうだったの?じゃ、魔法に掛かりやすい状態だったんじゃない」

「そんな風だったかな、よく覚えてないです」

「で?どういう事なの?」

「Shintaroさんとアメリカで再会、あ、いえ、会う前の彼の話しです、ここから長くなりますよ」

「聞こうじゃないの」

「大丈夫よ、どうぞ」

「Shintaroさんは日本で大学を出た後、某有名企業に就職して、そこでも彼は優秀な社員でエリート街道まっしぐらだったみたいです、大学の後輩がそこの会社に入って来て、その女性は会社の社長の娘さんだったそうです、その時は知らなかったみたいですが、その彼女はShintaroさんの事を好きだったんです、その事を父親に話した事から社長の目に留まり、元々、上層部でも優秀な社員として知られていたので引き上げて跡取りしたいという事だった様です、でも、当時、同じ職場の同期の女性とお付き合いをしていたShintaroさんは、後輩として可愛がっていたけれどそれ以上の気持ちはないと断ったそうです、その事を告げられた社長の娘さんはある事件を起こしたんです」

ゴクリとコーヒーを飲み深呼吸を二回、黙って見守る二人、そして続ける

「会社のワークショップで山へキャンプへ行った時にShintaroさんのお付き合いしていた女性とその後輩の女性と口論になり、後輩の女性が一人でいなくなってしまった、彼女は夜になっても戻らず、大騒ぎになり警察や、山岳警備隊も出て皆で捜索したところ、山中で足を踏み外し坂を転げ落ちて、足に大けがを負ってしまい歩けなかったそうです、Shintaroさんが原因で口論になった事がわかり、根も葉もない噂が流れ、その事が会社中で評判になりました、後輩の女性が流した噂です、結局、悪者にされ、会社に居られなくなってしまった同期の女性は退職に追い込まれ、Shintaroさんを恨む様な感じになり、関係も悪くなってしまって別れてしまったそうです」

「ドラマによくある話しみたいね、でも、Shintaro君は悪くないじゃない?」

「まぁ、Miyuさん、最後まで聞きましょう」

「後輩の女性はその後、どんどんエスカレートしてしまったらしいです、というのも、その時の怪我で片足が少し不自由になってしまった、普通に歩く事は出来るけれど、早く歩いたり、走ったりすると引きずるそうです、その事をShintaroさんのせいにして、結婚する事で責任を取れと言ってきたりした、一度はそうする事がいいのかもしれないと考えたみたいですが、役員や上層部の中には事件をきっかけに良く思わない人達も出て来て、仕事も上手く行かず、退職してアメリカへ留学する事で彼女から離れようとした、それでも後輩の女性は、資金は出すからアメリカから帰って来たら、また、会社へ戻って結婚して跡を継いでくれる事を約束してくれと迫った」

「そこまで…相当好きだったんだねぇ」

「Shintaroさんははっきりと離れたいと、全くその気持ちが無い事を伝えて、行く先も何も言わずに会社を辞めて渡米した」

「そりゃそうよね」

「ただ、日本に帰ってしばらくして、大学の友人から聞いたそうですが、その後、彼女は精神的におかしくなってしまい会社も辞めてしまったらしいです」

「まぁ、そうだったの」

「当然、Shintaroさんにしてみれば、心を痛めていましたが、ある時、ばったりと街でその後輩の女性に会ったんです、男性と仲良さそうに腕を組んで歩いている彼女は、全く忘れてしまったかの様に通り過ぎて行ったそうです」

「変わってしまって気が付かなかったのかしら?でも、そんなに好きだった人ならいくら変わっていたとしても気が付かないものかしらね」

「確かに、でも、アメリカで暮らしていたらそれまでとは随分、変わるんじゃない?」

「いいえ、彼女はShintaroさんとの記憶を封印したんです、全て、忘れてしまった」

「え?記憶喪失?って事?」

「人はあまりに辛い出来事やショックを受けるとその記憶を遮断し、蓋をする、心因性のものだそうです」

「なるほど、聞いたことあるわ」

「その女性は、その後、他の人と結婚したそうです」

「そう、幸せになれたのかしら、そうだったらいいんだけど」

「Shintaroさんも、ある意味ホッとしてそう思ったそうなんですが」

「うんうん、そうだろうね、ん?が?なに?まさか、記憶が戻った?」

「いえ、彼女の方じゃないんです、Shintaroさんの方が気が付いてしまった、思い出してしまったんです」

「ん?どういう事?意味がわからないんだけど」

「まさか…」

まるで時間が止まっているかの様な空気感を壁時計がかき消すように時刻を告げる

「なに、なに?どういう事?」

「でも、アメリカにいる時には気が付かなかったの?」

「そうみたいですね、たぶん、Shintaroさんも忘れたいという意識が強かったんじゃないかと」

「ねえ、あなた達二人だけわかっていて、私はさっぱりなんだけど、教えてよ」

「ごめんなさい、Miyuさん、ここから先の話しは今はちょっと話せないんです、私の一存では決められないんです」

「ふ~ん、それってさ、Shintaro君って事?じゃさ、Shintaro君が良いっていったら話せるの?」

「あのぉ、まぁ、そうなんですけど、色々と…」

「Shintaro君、電話で呼ぶ?」

「え?今からですか?」

「うん、だってまだ、そんなに遅くは無いでしょう?あの子、きっとまだ仕事してるわよ?帰りにこっちに寄ってもらえばいいじゃないの」

そう言って、携帯を取り出し電話をかけ始めたMiyuさんの勢いは、もう、誰にも止められそうには無いのでした

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • Miyuさんはちょっとせっかちで関西のおばちゃんみたいですね。。

  • マユミさん、いらっしゃいませ
    ご来店ありがとうございます、ごゆっくりお寛ぎ下さいね

    Miyuさんはとっても人気のあるお客様の一人です、ファンがとっても多いんです
    女性から見てもカッコイイですものね
    マユミさんは関西の方かしら?どんどん呟いて下さいな、ストーリーに登場するかもしれませんよ
    この後の展開もお見逃しなく!

    オーナーKei

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