迷っていたから
「用意が出来たわよ、こぼさない様に気を付けてね」
「は~い、行ってきます」
大きな音でドアベルを鳴らしてNanaがデリバリーへ
「喜んでデリバリー行くのね、外にも出たいのかしらね、ねね、ところでさ、最近、Nanaの車が駐車場にあるけど、Shintaro君の送りがなくなったの?」
「それが、よくわからないんですけどね、一つにはこのところは後をつけられたりする危険がなくなったと感じているみたいです」
「ふ~ん、本当に安心しても良いなら、まぁ、どちらにしても気を付けないとね」
久しぶりにMiyuさんがカウンターでコーヒータイムを楽しんでいる
「それか、何かあったのか、上手くいっていないのかもしれませんけど」
「そうなんだ、聞いたら言うかな?言わないかな?」
「どうでしょうね、でも、もう、大人の二人ですしね、あまり深く聞くのもどうかと思って」
「そうよね、向こうから相談なり、愚痴なり言ってくれたら良いのだけどね」
「それに、思うんですけど、そもそもどういう関係なのかもはっきりしていないんじゃないかしら?それか、出来ない理由があるんじゃないかしらって思うんですよね」
「それは私も思ってた、それがどちらに原因があるのかってね」
「ええ、この前の誰かに押されて怪我をした事件もあるし、Shintaroさんの方じゃないかしらと思ってるんです」
「うんうん、だから、Nanaは言えない、か、言ってはいけないと思っているって事か」
「ええ、そうなんですよ」
「そうかぁ、あの子さ、なんか他人とは思えないのよ、Nanaに感化されていると思われるかもだけど、前世では娘だったとか、ね、あははは、それと同じくらいオーナーともね、何か深い縁があったんじゃないかって感じるのよ」
思わず、絶句する、Miyuさんの鋭さにはいつも驚くが、つい、そうなんですよと言ってしまいそうになる
「ちょっと、お替りもらえるかな」
「はいはい、用意してありますよ」
爽やかなモカの香りが漂う
「毎回、いい香りにうっとりするわ」そう言って嬉しそうにひと口
「モカ系、お好きですものね」
「軽いめまいを感じそうだわ、どうしたらこんなに美味しいコーヒーを淹れられるの?」
「ふふ、それはMiyuさんの事を誰よりも理解しているからですわ」
「へ?なんだか、Nanaが乗り移った様な回答ね」
ドアベルが鳴り、Nanaが戻って来た
「噂をすれば、お帰りだわね」
「あ~Miyuさん、私の悪口でも言ってたんでしょう?」
「良くわかってんじゃん?あのさ、Nana、Shintaro君とはどうなってんの?」
「また、Miyuさんったら、単刀直入に聞き過ぎですわよ」
「何言ってんの、まどろっこしく聞くより、シンプルが一番でしょ」
目をパチクリしていたNanaもちょっと黙り込んで何か考えている様子
「その顔はもうそろそろ、自分では抱えきれなくなって来てるんじゃないの?誰かに助けを求めたいって思ってるんじゃない?」
意を決した様に口を開く
「確かに、はっきり聞かれて良かったです、迷っていたから、でも、前にオーナーにも言ったんですけど、一つ話すと全部話したくなってしまうし、決して楽しい話しではないし、自分で解決しないといけない事だし」
「あのさ、私達をちょ~っと見くびってない?そんな事は疾うにお見通しよ、そのくらい受け止めてあげられないと思う?中途半端に心配してるとかって思ってる?」
顔を上げてこちらを交互に見つめるNanaに頷くと、少し口元が緩んで柔らかくなって行く
「あ~あ、このスーパーレディ二人には勝ち目はないですよぉ、まっ、そんな事わかってましたけど」
そう言ってニッコリ微笑んで椅子に腰かける、なぜかスーパーレディの所は英語の発音になっている
「オーナー、コーヒー下さい」
「はいはい、わかってますよ」
さすが、元母、あっ、前世だけど、もしかしたら、本当は知っているんじゃないかと思ってしまうのでした
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