気が遠くなりそう
「それじゃ、わしはそろそろ帰るとするよ、美味しいコーヒーご馳走さん、Nanaちゃんとコーヒー飲むのは楽しいね」
「もう帰っちゃうんですか?」
「朝、早いし、カミさんが待ってるからね」
「ありがとうございました、遅くにすみませんでしたね」
「お安い御用だよ、オーナー」
「奥様の好きなコーヒーが入りましたから、それと頂きものですが、良く合う和菓子があるのでお持ち帰りになって下さいな」
台車を押しながらゆっくりと扉を開けて、どことなく嬉しそうに手を振って帰って行った
「ねね、どうかしたの?Shintaroさん、Katsuさんと会うのは初めてだったっけ?」
「いや、突然だったからちょっとびっくりしたんだよ」
「そうね、私もふと気が付いたのよ、Shintaroさん、知らなかったんじゃないかってね」
はてなマークが頭の上にいくつもピカピカ光っているNana
「Nanaは知らないわね、きっと記憶の中には登場していないか、武装していて気が付かなかったんじゃないかしら、でも、さすがにShintaroさんは微かにでも記憶に残っているはずよね、お父様だったんだから」
「はい、ほとんど帰っては来なかったんじゃないかと思います」
「え、え?あ~そういう事なんだ、じゃ、Katsuさんが護衛隊長?で、Shintaroさんのお父さん?だった?」
「そうよ、あなた達は王様を見た事はないでしょう?王様の護衛隊長だったから、かなり隠密に行動されていたの」
「そうだったんですね、王妃様は王様との記憶、護衛隊長との記憶があるんですね」
「立派にお役目を果たされていらっしゃったわ、王様には蟻一匹寄せ付けない程に厳重で忠誠心がお有りでね」
「では、鍵のひとつを持っていたという事ですよね」
「そうね、Shintaroさんの持っている鍵はお父様から受け継いだものでしょうね、ですから宮廷内の玉璽楼へ入る門の鍵じゃないかしら」
「オーナーの持っているというか、忘れ物の鍵は玉璽の箱の鍵でしょ?保管してある棚の扉の鍵が今は取れちゃっているけど」
「たぶん、そうね、そしてNanaの持っている鍵は建屋の入り口の扉を開けるの鍵、託された第一の家臣があなたのお母様で私の姉上様のMiyuさんの旦那様、Shigeさんだったのよ」
「なるほど、そういう事か、この前、オーナーが言っていたもう一つの王様と王妃様だけが知っている鍵は?」
「それは、先日いらっしゃったあの美しい女性、憶えてる?」
「美しい女性?ああ、やっぱり、オーナーは知っていたんですね」
Shintaroさんはキョトンとしている
「この前ね、特別すごいオーラを放つ女性のお客様がいらっしゃって、このカフェのコーヒーが美味しいと評判だからとね」
「そんな事があったんですか」
「めちゃめちゃ綺麗な人で圧倒されるほどだった」
「あの方は廃妃されたRin様よ、廃妃されたずっと後に、私は一度だけ別邸でお目にかかった事があったの、ちょっとある事がきっかけでね」
「じゃあ、あの人が秘密の鍵を持っているのかな」
「さぁ、どうかしらね、持っているのかもしれないわね」
「そうか、それと、もう一つ、私、気になっていて、この前、Renさんが一人で来たでしょ?」
「そうなんだ?ああ、この近くの会社の担当になったからね、帰りが遅かったのはカフェに寄っていたんだね」
「なんだか、拍子抜けする程に私には目もくれず、オーナーに夢中だったんだよね~」
「じゃあ、彼が言っていた運命を感じる人というのは、Nanaじゃなくて、もしかして…」
「これは当時、限られた人だけが知っていた噂なんだけど、廃妃されたRin様には隠された子供がいたというのよ、私も見た事も聞いたことも無かったので単なる噂に過ぎないと気にも留めていなかったんですけどね」
「それが、Renさん?って事?」
「わからないわ、何となくそんな気がしているだけよ」
大きなため息と視点の定まらない目でぼ~っとしているNana
「はぁ~なんだかなぁ、まだまだ知らない事があるんですね~気が遠くなりそう」
「そうよね、私も全てを思い出したとは思っていないわ、それに鍵が全て見つかった訳では無いしね」
「あっ、そうだ、Shigeさんに会った事ないよね?Shintaroさん、えっと、大通りの病院のお医者様で夜勤明けに良く来てくれるお客様なんだけど、今度機会があったら会わせてあげるね、会ってみたいでしょ?」
「ああ、そうだね、仲良しなの?」
「ふふ、ここの常連のお客様でNanaと仲良しじゃない人なんていないわね」
「でも、Katsuさんがねぇ~うん、まぁ、納得だな~MiyuさんやKatsuさんには話す?信じてくれるかな」
「どうかな、いずれ、その時が来たら、場合によっては助けてもらう事になるかもしれないとは思うね」
その時がいつなのか、本当に来るのか、まだまだ謎が多く、霧がかかったような行く先に思いを馳せる3人なのでした
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