ぴゅーっと風音
カフェの重い扉がふわっと浮いてドアベルが鳴る
スライドの窓ガラスを少し上げるとぴゅーっと風音の叫び声
「なんて風なのかしら」
「オーナー、台風並みの低気圧の影響だそうですよ、さっき、ネットニュースで言ってました」
「そうねぇ、これから雨がザーっと来そうね、お客様も少ないし、早めに閉めましょうか」
「そうですね」
「あ、でも、電気屋のSugiさん来る日じゃなかったですかぁ?」
「このお天気だと忙しいかもしれないわ」
「停電に備えて電池とライトとか買いに来るお客様が来るでしょうか?」
「最近、地区のお年寄りの家に配達して取り付けたり、ついでにお店に寄って買い物したりもしているそうよ」
「なるほど、Sugiさん、親切だからなぁ」
「これからはそういう仕事も必要になっていくんじゃないかしら」
「電話して届けてあげましょうか、もし忙しい様なら」
「そうね、それがいいわ、Nana電話してくれる?」
「あ、もしもし、Sugiさん?今日来る?木曜日だけど、そうでしょ?忙しいと思ったんだ、コーヒー配達しておこうか?お店誰かいる?はーい、5つですね、わかりました~毎度でーす」
「どう?やっぱり忙しいって?」
「そうみたいです、じゃ、私、サクッと持って行きますよ、すぐそこだし」
「じゃ、すぐに用意するわね」
「気をつけて持って行ってね、風に飛ばされない様に」
どんよりとした雲は低く、辺りはもう暗くなり始めている
カフェの道から通りへ入る角を曲がって姿が見えなくなった
曲がってすぐの所にSugiさんの電気屋がある、ほんの数分だが、先日、帰りに誰かに追いかけられた件があって以来心配になる
「あら、降って来たわね、ぽつぽつと」
二組いたお客様が風の中へ消えていった、が、Nanaはまだ帰って来ない
「上がり込んでお喋りしているのかしら」
たまに、そういう事もある
エントランスのドアベルが鳴り、入って来たのはボクサーさん
「あら、お久ぶりですわね」
「こんばんは、風が強いですね、今夜は荒れそうだ、あれ?Nanaちゃんは今日はお休みですか?」
「いえね、今、その角を曲がったところの電気屋さんにコーヒーのデリバリーに行ってもらってるんだけど、ちょっと帰りが遅いので心配していたんですよ」
「そうですか、もう暗いですしね、ちょっと見てきましょうか」
「お願いしてもいいですか?」
一緒に前の道に出てみるとこちらに向かって歩いて来るNanaの姿が見えた
「帰って来たわね」
「そうみたいですね、あはは、良かった」
「ん?でも、なんかおかしくないかしら?」
「あれ~?足を引きずってますね?転んだのかな?」
ボクサーさんはさっと走りだした
足を怪我しているのだろうか、もう、暗くなった道の外灯にぼんやりと映る姿はボクサーさんに抱えられている様に見える
近づくにつれて、大きな瞳がさらに大きく開き、慌てて走り寄るKeiなのでした
コメント
コメント一覧 (2件)
カフェを訪れる個性的な人々の表情やオーナーの淹れるコーヒーの味を想像しながらストーリーの展開を楽しみにしています。
みきさん、いらっしゃいませ
ご来店ありがとうございます、ごゆっくりお寛ぎ下さいね
カフェを盛り上げて下さっているのはお客様方です
みきさんも是非、常連のお客様になって下さいね
お好きな事をご自由に呟いてみて下さい
ストーリの中に登場するかもしれませんよ
オーナーKei