託された思い
それは遥か昔の話し、とある一国の王がこの世の最後に残した言葉を知るものは限られていた
その王には跡継ぎとなる子は無く、臣下の間ではその後の混乱を避けるための策が討議されていた
王はその父からその座を受け継ぎ王となったが、古いしきたりに縛られず、新しい世を作りたいと考えていた
自分の後にこの国を治める者は、その実力と人格によって選ばれ、議会でそれを認める人物を選ぶという発展的で自由な考えを持っていた
そして、選ばれし者にその証しとなる玉璽を授け、王とし新しい時代を託す事とした
本来であれば、見届けたかった事であろう
志し半ばで急な病に倒れ、やむを得ず、信頼の厚い三人にこの言葉と三つの鍵を渡した
一人では荷が重いであろうという気遣い、そして一人ではなく、三人に託したのにはその、誰が欠けても成らず、全員の一致と協力が不可欠であるという思いからであった
家臣の中には野望を持つ者も存在し、また、王の考えに賛否両論があった事も事実である
これまで、この国が平和であったのは王とその家臣のバランスが取れていたからであって、それが崩れてしまえば何が起こるのか
ひとつの時代が終わり新しい時代へと変わるのだから混乱が起きるのは明らかであろう
玉璽は限られた者だけが知るその場所に保管され、宮中内のその建屋は厳重に守られていた
一つ目の鍵はその隔たれた敷地に入る門の鍵、二つ目の鍵は保管されている建屋に入る鍵、三つ目の鍵は玉璽の眠る箱の鍵、但し、その箱は飾り棚に保管されているため、その棚の扉を開ける小さな鍵が一緒についている
その三つの鍵を託したのは、第一の家臣、護衛隊長、そして王妃の三人と言われている
その後、国は権力を争う家臣や、財力を持つ高級官僚、博識の高い学者などの間で意見が分かれ、派閥や対立が激しくなり、混乱の世となって行く
そしてその乱世の時代は長く続き、この鍵の行方をめぐり様々な説が生まれ、真実は霧の中に消えて行ってしまったのです
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