不自然な二人
「さてと、そろそろ行くわ、今日、入って来た商品見ないといけないしね」
「そうですね、今日中にまとめて、メールで送ります、じゃ、そろそろ」
「来週、新しい社員が入って来たら、また、ランチに連れてくるわね、後、まとめRen君、お願いね」
所狭しと並んでいた書類やサンプルを片付けているのを横目に、相変わらずマイペースにコーヒーを飲んでいるMiyuさん
「Shintaro君、もうちょっとゆっくりコーヒー飲んで行ったら?まだ、残ってるじゃない?」
「それじゃ、Ren君、乗ってきなよ、どうせ通り道だから落としてあげるわよ」
「あ、いや、でも」
「遠慮しなさんなって」
「ああ、あ、それじゃ、お願いします」
ナイス、HaruさんとばかりにMiyuさんが、ニヤリ
「また、後で」エントランスの前で、斜め後ろを見て、Shintaroさんに声を掛けるRenさんの口元が少し歪んだ様に見えた
「Shintaroさん、働き過ぎじゃないかしら、これ、ランチの残りだけどスープ飲んでみて」
「お気遣いありがとうございます、美味しそうですね」
カフェのランチでも好評の身体に優しい薬膳のスープを温めてカウンターに置いた
自然と席をカウンターに移す事になって不自然な二人がどんよりとした空気に包まれている
いくつかのカップにスープを注いで蓋をするとテイクアウト用のボックスを二つ
大きい方のボックスをMiyuさんのいる奥の席に運ぶ
「これ、持って行って、後で、どうぞ、多かったら事務所の皆さんに分けて下さいな」
「悪いわねぇ、いつも、このスープみんな喜ぶのよ」
カフェの壁時計が時刻を告げて、仕事帰りのお客様がするすると席を埋め始める
「私もそろそろ社に戻らないと、スープのお陰で疲れも取れた様です」
「Shintaroさん、こちら、少しですけど、お持ち帰り下さいな」
用意していたもう一つのテイクアウトボックスをNanaに渡す
「ありがとうございます、遠慮なく頂きます」
いつもの爽やか過ぎる笑顔が何となく淋しそうにも感じる
エントランスの厚い扉がゆっくり薄闇と街の雑踏を遠ざけて行く
「んじゃ、私も戻るかな、まだ、やらないといけない事もあるし」
「Miyuさんもお疲れ様ですね」
その時、一瞬の静けさの中にはっきりと聞こえた声の最後に顔を見合わせたのでした
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