本物以上に美味しく作っちゃう
「お腹いっぱいだわ、美味しくて食べ過ぎちゃったわ」
「お口に合ってよかったです」
常連のお客様のHaruさんが会社の同僚を連れて賑やかにランチタイム
「では、食後にコーヒーをお持ちしますね」
「あ~コーヒー飲みたい、美味しいのよ、オーナーの淹れるコーヒーは」
「楽しみだな~これを待っていたんですよね~」
「美味しいコーヒー飲みたかったんです」
豊かな深いコクを感じる香りが漂い、皆、うっとりしている
「あぁ、美味しいですね、これなんですね」
「食後のコーヒーはなんて最高なんでしょう」
皆、コーヒーの魔法にかかって行く
Haruさんはデパートの外商のお仕事でブランド品から雑貨まで色々な商材を扱っている
買い付けに海外へ出かける事もあるし、いつも忙しくあちこち飛び回っているパワフルな女性
そして、何よりも食べる事が大好きで、海外、国内問わず美味しいものを沢山知っている
Haruさんは元々は食品会社を経営しているオーナーの良きブレーンのMiyuさんとの繋がりで、今では常連のお客様になったのである
「そういえば、食べたいものがあるんだけど、作ってくれないかなぁ」
「あら、今度はどんなご希望かしら?」
国内外での色々な地域で食したディッシュをオーナーにリクエストしてきた
「この人ね、すごいのよ、私があちこちで食べてもう一回食べたいと思う料理をリクエストすると、本物以上に美味しく作っちゃうのよ~」
「私たちも食べてみたいですよねぇ、是非、お願いしたいですね」
「しかもね、普通にそこら辺で食材も調達して作るから驚きよ」
「あらあら、あまり、ハードル高くしないで下さいな、Haruさんのお料理の説明が上手なんですよ」
確かに、Haruさんはまるで、昨日食べてきたかの様にリアルに表現して、こんな感じの食べたいと話しているのを良く耳にする
お話しも上手く、みんなを引き込む様な持って行き方など、流石、ベテランの外商だと感じる
「そういえば、例の企画もそろそろ次の段階に入るんじゃない?」
「そうですね、来週、Miyuさんも来ることになっていますよ」
「Shintaro君がサンプルの写真撮りの日程を詰める話しで来てたけど、ちょっと調整しないと合わないわ」
「それぞれ、忙しい人ばかりですものね」
「最近、なんか、ほら、よく一緒にいる、何となく感じの似てる人、名前なんだっけ?あの、Shintaro君の影みたいな人、えっと…」
(カシャーン)「きゃっ!すみません、すぐ片付けます、すみません」
「どうしたの?大丈夫?」
持っていたお盆を落としてしまったNanaが慌ててこぼれたコップの水を拭いている
何に動揺したのか、影という言葉?視覚の隅に映った顔のない映像が蘇る
あの青年だろうか、Nanaは何を知っていて、何を恐れているのか
これからの季節、企画やイベントだけでなく、色々と忙しくなりそうなカフェケイズなのでした
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