テレビで見たことある人
朝の冷えた空気が嘘の様な暖かさが降り注ぐカフェの午後
窓の外には通り沿いのガラスを拭いていたNanaが慌ててエントランスへ向かう姿が見える
ドアベルが鳴り、「オーナー、オーナー」
「あらあら、何事かしら?」
「たぶん、テレビで見たことある人です、ほら、えっと、」
ドアベルが優しく鳴り響き、プロゴルファーのEisukeさんがにこやかにご来店
ドアベルの音からしても、温厚な人柄を知ることが出来る
Nanaが来てから初めての来店で驚いたのだろう、Eisukeさんはこのカフェの常連のお客様だが、ツアーなどで海外へ出る事も多いのだ
「お帰りなさい、ご活躍はテレビで拝見してますよ」
「いやぁ、ご無沙汰です」
「すぐ、淹れますね」
そわそわしているNanaに微笑むEisukeさん「新しいスタッフさんかな?よろしくね」
「あ~、やっとオーナーのコーヒーが飲めるよ、今回は長丁場だったから、持って行ったのは途中で無くなってしまってね」
ツアーに出る前はいつもお持ち帰りをされているくらいオーナーのブレンドを好んでいる
「これだよね、美味しいよね~」にっこりとひと口
「そうなんです、私も大好きなんです!オーナーの魔法のブレンド」
「あっはっはは、中々の人材がスタッフさんに入ったみたいだね、心強い味方だねぇ」
相変わらず、不思議な褒め言葉だが、そんな様子が場を和ませる
「しばらくは日本にいらっしゃるのかしら」
「そうだね、ちょくちょく、来るからね」
すぐ、次のお替りを用意しているとNanaがキョトンとした目で見ている
少し頷いて、目で合図をすると、何も聞かずにサッと次のカップを温めて用意するNana
こういう所は勘が良いというか、頭の回転が速いなと感じる
Eisukeさんは二杯目も美味しそうに口にしながら、ツアー先のホテルがとても気に入ったという話しをして現地で買ったお土産をおいて帰って行った
Eisukeさんは極力、暖かいコーヒーを飲みたい人なのだった
「最初の頃、いつも最後のひと口くらいが残っていたの、それが気になって、あまり時間を空けずに暖かい二杯目を出すようにしたのよ、そうしたら、こんな事を呟いて下さったの」
「こんなおいしいコーヒーを最後まで暖かいまま飲めたらいいのになぁ、だって、残っているのに、二杯目を頼むなんて申し訳ないじゃない?」
その後、Keiはカフェの近くで会社を経営している常連のお客様のTakaさんとSouさんにある相談を持ち掛けていたのでした
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