112nd Episode 『一緒にいられる時間【Time to be with you】』

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海の見えるカフェって夜もいいよね

ドアベルが鳴り、Shintaroさんが看板を持って入って来た

「あらあら、いつもすみませんね、Shintaroさん」

「いえいえ、大丈夫です、どこに置きますか?」

慌ててNanaが入って来て、「ごめんね、駐車場にゴミが落ちていたから拾っていたの、こっちに置いてくれる?」

「慌てて来なくても大丈夫だよ」

「ありがとう」

「Shintaro君は親切だねぇ、何も言わなくても、ちゃんと看板に気が付いて入れてくれるんだから」

「そんな、大した事じゃないですよ」

「うん、看板は結構重いから助かっちゃう」

「Shintaroさん、コーヒーどうぞ」

「いただきます」

「このコーヒーもソルジャーさんの豆だよ、今日のはブラジル コーヒーだよ」

「うん、美味しいね」

「Shintaroさん、お好みでしょう?バランスの取れた味わいですから」

「そうですね、好きな味です」

「毎日、お迎えご苦労様ねぇ、仲良くやってる様で安心だわ、いっその事一緒に住んじゃえばいいのに」

「Miyuさんったら、またまた爆弾発言って言われますわよ」

当の二人はクスクスと笑ってやり過ごしている

MiyuさんとオーナーKeiは顔を見合わせ、ちょっと首を傾げる

「なに?いつもなら眉間にしわを寄せて怒るのにさ、もしかして、そういう方向に考えてるって事なの?」

「方向も、何も考えてないですよ、まったく、もう」

Shintaroさんも声を上げて笑って、その場は笑い飛ばされて終わり、間もなく二人は帰って行った

静かになったカウンターに二人並んでいるMiyuさんとオーナーKei

「あんまり心配する事はないのかもしれないね」

「なんだか拍子抜けしましたわね、Sakiさんの話しは折を見て、Nanaがいない時にShintaroさんに話しておきますわ」

「そうだね、やっぱり聞いた事は話しておいた方がいいよね、任せたわ」

いつもの心地よいシートに良い香り、優しい音楽が静かに流れるShintaroさんの車の中で、ぼんやりと外を眺めているNana

「明日は祝日でお休みでしょう?」

「そうだけど、Nanaはカフェは休みじゃないだろう?」

「うん、カフェはあるけど、何となく、このまま家に帰るのもなんだなって」

「ちょっと海の方でもひと周りしようか?」

「うん」

「この時間でもやってるカフェあるかな」

「どうかな」

「海の見えるカフェって夜もいいよね」

「そうだな」

「Shintaroさん、どうかした?」

「いや?どうして?」

「さっきから、どうかな?とかそうだなとか心ここにあらず?みたいな感じ?」

「あはは、いや、そうじゃないんだけど、ちょっと考え事してたんだ」

「考え事?」

「うん、Nana、毎日、送るのが面倒とかじゃなんだ、けど、Nanaが気に入っているなら、うちに来ないか?あの部屋は前も言ったけど、Nanaが来ることを想定して用意した部屋だし、家主がいつまでもいないのも淋しいだろう?」

「え?あぁ、うん、そっか、そうだよね」

何となく、いつかはそうなったらいいなと思っていたNanaにとっては嬉しいはずなのに、いざ、現実になるとこれでいいのかと不安になる

「まっ、ちょっと考えてみてよ、何も今すぐにと急ぐ事もないからさ」

「うん、ありがとう、今まで、当たり前の様に思っていたけど、Shintaroさんと一緒に居られる時間って、すごく幸せなんだなって思うよ」

「Nana、熱でもあるんじゃない?大丈夫か?そんな事言われると逆に不安になるよ」

そう言って、いつもの様に頭を優しくポンポンと叩いて、爽やか過ぎる笑顔を向ける人なのでした

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