海の見えるカフェって夜もいいよね
ドアベルが鳴り、Shintaroさんが看板を持って入って来た
「あらあら、いつもすみませんね、Shintaroさん」
「いえいえ、大丈夫です、どこに置きますか?」
慌ててNanaが入って来て、「ごめんね、駐車場にゴミが落ちていたから拾っていたの、こっちに置いてくれる?」
「慌てて来なくても大丈夫だよ」
「ありがとう」
「Shintaro君は親切だねぇ、何も言わなくても、ちゃんと看板に気が付いて入れてくれるんだから」
「そんな、大した事じゃないですよ」
「うん、看板は結構重いから助かっちゃう」
「Shintaroさん、コーヒーどうぞ」
「いただきます」
「このコーヒーもソルジャーさんの豆だよ、今日のはブラジル コーヒーだよ」
「うん、美味しいね」
「Shintaroさん、お好みでしょう?バランスの取れた味わいですから」
「そうですね、好きな味です」
「毎日、お迎えご苦労様ねぇ、仲良くやってる様で安心だわ、いっその事一緒に住んじゃえばいいのに」
「Miyuさんったら、またまた爆弾発言って言われますわよ」
当の二人はクスクスと笑ってやり過ごしている
MiyuさんとオーナーKeiは顔を見合わせ、ちょっと首を傾げる
「なに?いつもなら眉間にしわを寄せて怒るのにさ、もしかして、そういう方向に考えてるって事なの?」
「方向も、何も考えてないですよ、まったく、もう」
Shintaroさんも声を上げて笑って、その場は笑い飛ばされて終わり、間もなく二人は帰って行った
静かになったカウンターに二人並んでいるMiyuさんとオーナーKei
「あんまり心配する事はないのかもしれないね」
「なんだか拍子抜けしましたわね、Sakiさんの話しは折を見て、Nanaがいない時にShintaroさんに話しておきますわ」
「そうだね、やっぱり聞いた事は話しておいた方がいいよね、任せたわ」
いつもの心地よいシートに良い香り、優しい音楽が静かに流れるShintaroさんの車の中で、ぼんやりと外を眺めているNana
「明日は祝日でお休みでしょう?」
「そうだけど、Nanaはカフェは休みじゃないだろう?」
「うん、カフェはあるけど、何となく、このまま家に帰るのもなんだなって」
「ちょっと海の方でもひと周りしようか?」
「うん」
「この時間でもやってるカフェあるかな」
「どうかな」
「海の見えるカフェって夜もいいよね」
「そうだな」
「Shintaroさん、どうかした?」
「いや?どうして?」
「さっきから、どうかな?とかそうだなとか心ここにあらず?みたいな感じ?」
「あはは、いや、そうじゃないんだけど、ちょっと考え事してたんだ」
「考え事?」
「うん、Nana、毎日、送るのが面倒とかじゃなんだ、けど、Nanaが気に入っているなら、うちに来ないか?あの部屋は前も言ったけど、Nanaが来ることを想定して用意した部屋だし、家主がいつまでもいないのも淋しいだろう?」
「え?あぁ、うん、そっか、そうだよね」
何となく、いつかはそうなったらいいなと思っていたNanaにとっては嬉しいはずなのに、いざ、現実になるとこれでいいのかと不安になる
「まっ、ちょっと考えてみてよ、何も今すぐにと急ぐ事もないからさ」
「うん、ありがとう、今まで、当たり前の様に思っていたけど、Shintaroさんと一緒に居られる時間って、すごく幸せなんだなって思うよ」
「Nana、熱でもあるんじゃない?大丈夫か?そんな事言われると逆に不安になるよ」
そう言って、いつもの様に頭を優しくポンポンと叩いて、爽やか過ぎる笑顔を向ける人なのでした
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