目次
何かが足りない
お陽さまが照らしている窓際は暖かく、薄着のまま外に出てしまいそうな午後、ぼんやりと眺めながら一杯のコーヒーを口にする
車が入ってくるのが見えて、エントランス近くへ
常連のお客様、Shoさんが寒そうに首をすくめて入って来た
ポケットに入れていた手に息をかけて「風が冷たいね、暖かいいつものお願いね」
「そうそう、これ、出来たよ」「あら、早かったのね、急いで下さったの?」
「オーナーのお願いだからね、最優先さ」「ふふ、コーヒーはご馳走しますね」
Shoさんは企画で使うサンプルをカウンターに置いて、近くのヒーターで手を温めている
「さぁ、淹れたてをどうぞ」「あ~美味しいね、ホッとするよ」そう言いながらにっこり笑って胸元の震えている携帯を触っている
「あぁ、ちょっとごめんね」彼もまた、忙し過ぎる人なのだ
午後のカフェは後、一時間もすれば、忙しい時を迎える
ほんのひと時の静けさに、ふと、何かが違う、何かが足りないと思う
脳裏に一瞬の映像が蘇ってくる
そっと引き出しを開けて見ると、やはり、そう、これはちぎれた一部分なのだ
この事を特別にする必要があるのか、でも、知りたいという気持ちが交差する
そろそろ、Nanaが仕事を終えて、カフェに来る時間に、Keiの心は揺れていたのです
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