マジでやばいかもね?
久しぶりの月夜、虫の声が段々変わって秋風が優しく肌を撫でる
ドアベルが鳴り、眩しい光が辺りに零れるとJinさんの顔が見える
「どうも、ちょっと早すぎたかな」
「お久しぶりですわね、ささ、どうぞ」
「急に連絡してすみませんでした」
「いやいや、大丈夫だよ、Nanaちゃんの顔も見たかったしね、それにそろそろかなとは思っていたから」
「お呼び立てして申し訳ありませんわ、どうぞ」
「やっぱり良い香りだ、恋しかったんですよ」
「ふふ、嬉しいですわ、そう言っていただけて」
「ところで、今日は彼も来るんでしょう?じゃないと話しは進まないだろうし」
少し、躊躇している様に伏し目がちなJinさんがコーヒーに手を伸ばす
「はぁ~美味しいな、まろやかでコク深い」
「ふふ、ありがとうございます」
「すみません、Jinさんは気が進まないですよね」
「まぁ、うん、でも、そんな事は無いよ、俺だってNanaちゃんを救いたいんだから」
ドアベルが鳴り、扉が開く「あ~喉渇いたわ、コーヒー頂戴」
「Miyuさん、お疲れ様ですわね」
「あら、Jinさん、ご面倒お掛けしますね」
「これはこれは、母上」
「なんだか、一気に息子が増えた感じだわ」
Miyuさんの肝の太さと表裏の無い所がこう言う発言に繋がるんだろうなと感心すらする、そして皆の心の扉を開くのであろう
「どうしたんですの?早いじゃないですか、すぐ淹れますわね」
「今日はずっと忙しくって水分取る暇もなくてね、逃げて来たわ」
「さ、どうぞ」
「うん、ありがと、ところでさ、Jinさん、ぶっちゃけあなたはどこまでわかってるの?」
あまりの唐突さにフォローも忘れ、唖然とするオーナーKeiとNana
「あっはっははは、さすが母上だな、そのバッサリ来るところ」
「ちょっ、ちょっとMiyuさん」
「いやいや、いいんだよ、Nana、その方が話しは早いし、よそよそしく探られるより気持ちいいさ」
「あっ、今、Nanaって」
「あっ、ごめん、つい、いいかな?そう呼んでも」
「いいわよ、どんなんでも、呼び方なんてねぇ?Nana」
「ええ~~勝手に決めてるし」
「Shintaroさんが聞いたらと思うと、どうかしら?ちょっと嫌かもしれないですわよ」
「まぁ、そうだろうね、彼のNanaへの想いというか、執着は異常だろう?」
「え?どういう事ですか?」
「冷静に考えて、彼ほどの人ならいくらでも相手はいるだろう?」
「そんな、Jinさん、Nanaが」
「ああ、ごめん、そういう意味じゃないんだ、Nanaじゃなければダメな何かがあるんだろうね?」
「確かに、Jinさんの言う通りですよ、何の取柄もない私にどうして?って思う事ありますから、ただ、Shintaroさんはギルティでそう思い込んでいるだけかも、ギルティって日本語でなんだっけ?」
「自分がそうしてしまったという罪悪感を感じている事でしょう?」
「それに、彼から発する強いシルバーの光、あれってちょっと普通にはないよな?」
「シルバーは戦士の光じゃないんですか?」
「う~~ん、まぁ、それはね、オーナーとも話してはいたんだよね、最近、ちょっと変わって来てるって話しね」
「う~ん、混乱しますわ」
皆が一斉にコーヒーをひと口
「はぁ、この舌先に感じる酸味が特別ね、美味しいわ」
「あの、Jinさんの目的は何ですの?」
「目的?って、別に、ただ、俺だって少なからず、Nanaには申し訳なく思ってる、元々の原因を作ってしまったんだからね、それに関しては、ちゃんと解決したいし力になりたいと思ってる」
「あの、Jinさん、一つ気になっている事があるんです」
「うん、俺もそれ、気になってる」
オーナーとMiyuさんがきょろきょろと目を泳がす
「何?何?」
「弟君って、あの、何処かにいますか」
「俺もさ、分かんないんだよな、どこかにいるのか、いないのか、見えないしね、でも、このカフェ?王妃様の周りにこれだけのメンツが集まって来てるって事はさ、やっぱり、どこかで様子を伺ってると思うんだよね」
「あ~~なるほどね、そう言われてみれば、そうよね?肝心な人を忘れてたわね」
「あら、もうこんな時間、Nana、外のライト落としてね」
「はい、ホールの片づけは終わってます、看板も入れますね」
「後はShintaro君を待つだけか、そろそろよね」
「Jinさん、あの、言いにくいんですけど、Shintaroさんとは穏やかにお願いしますわね」
「もちろんですよ、いやだな~オーナー?王妃様って呼んだ方がいい?そもそも、大昔の事ですよ?そんな事で恨みとかなんとかありませんよ、ただ、その因縁は現世にまで続いているのは事実で、断ち切らないといけないのは本当だからね、俺は現世のNanaをちゃんと見てますよ」
そう言って、Nanaの方へ視線を送る
「ん?」キョトンとしているNana
「こりゃ、マジでやばいかもね?」
「あっははははは、現世の母上は最高に面白い人だ」
爆笑しているNanaとJinさんを見て、とても複雑な心境になるオーナーKeiなのでした
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