102nd Episode 『封印の指輪【The seal of ring】』

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目次

何か隠し事があるのなら

「よく眠れなかったみたいね?」

朝のカフェは淹れたてのコーヒーの香りで包まれて幸せな気持ちになれる

「これで、ちょっと目を覚ましなさいね」

「ありがとうございます、オーナーのコーヒーは本当に魔法の目覚まし時計みたい」

「ちょっと苦みがあるかしら?」

「そうですね」

「寝不足の朝にはその苦みが効くのよ」

「そんな感じです、頭がはっきりして来ました」

「今日の夜、また、Miyuさんも来るわ」

「記憶、見えたんですか?」

静かに頷いて、そっとNanaの肩に手を置いた、優しさが伝わって来て全身を包む様にポカポカとしてくる

「さ、今日も忙しくなるわよ」

「はい」

天気がコロコロと変わりさっきまで降っていた雨は上がって、雲の切れ間から金色の光が見える

慌ただしくカフェの時間は通り過ぎ、会社帰りのお客様もお帰りになった頃、Miyuさんの車が見える

ドアベルが鳴り、扉が開く「お待たせ、どう?わかった?」

「Miyuさんたら、お疲れ様ですわね」

「あぁ、ごめん、わかったから連絡してくれたんでしょ?」

「ええ、先ずは、どうぞ」

「うん」

広がる濃厚なコーヒーの香りに鼻をひくひくとさせている

「あら、今日のコーヒーはちょっと深い感じの香りね」

「少し、苦みがありますわよ、良いかしら?」

「そういうコーヒーもいいわよ、たまにはね」

Shintaroさんの車が入って来るのが見えて、Nanaが看板を入れに行く

「一日はあっと言う間に過ぎるわね~コーヒー美味しいわ」

ドアベルと共に看板を持ったShintaroさんが入って来た、追いかける様にNanaが続く

「ありがとう、ここに置いてくれる?」

「Shintaroさんお疲れ様ですわね、ささ、コーヒー飲んで待っていてくださいね、すぐ、片付けてしまいますから」

「いただきます」

「ねね、で、どうなの?早く聞きたいわ」

洗い物をしながら、Nanaもオーナーの方を見る

「皆さん、待ちきれませんね?じゃ、少し話しながら片付けをしましょうか」

「Shintaroさん、呪文の様な文字は解読出来ませんわ」

「え?どういう事ですか?」

「何?わかんなかったって事なの?」

「いいえ、あれは解読する物ではなかったんですの」

「じゃ、何なんですか?」

「鏡蓋と鏡は組紐で繋がれていた、そうよね?」

「はい、そうです」

「ねぇ、その組紐は結んだ後、留め具に通されていたでしょう?」

「留め具?ですか?」

「Shintaroさんは知っているはずよ、あなたが鏡の棚に返したのだから」

「え?そうなの?だって鍵がかかっていて、誰も入れないでしょう?年に一回しか」

「Shintaroさんは全てにおいて誰よりも優秀でしたわね、当然、科挙も首席合格し、その上、剣術、武術、弓馬も右に出る者はいなかった」

「オーナー?何が言いたいんですか?」

「Nana、あとひとつ、訓練で学んだ事は何?」

「わかったわ、ほら、あれよ、あれ、Nana」

「忍術ですね」

「そう、普通の人には無理でも護衛部隊トップクラスのShintaroさんなら可能よね?」

「そう言われてみれば、てか、まだ、何か隠し事があるのなら、言ってよ、Shintaroさん」

黙ってオーナーを見つめていたShintaroさんが静かに首を横に振る

「隠しているわけじゃない、その辺りの記憶が曖昧なんです」

「どういう事?」

「Shintaroさんの背後にいる誰か、記憶を操作されているのか、操られているのか、黒い影が、ん~よくそこが見えないんですの」

「う~ん、オーナー、何だか、ややこしくってよくわからないです」

「この鏡事件はほんの入り口、序章に過ぎないという事ですわ、いたずらに皆を怖がらせてもいけないけれどね、でも、取り敢えず、Nanaを鏡から解き放つ方法はわかりましたわ、先ずはそれを片付けないと次が見えてこないのかもしれませんわね」

「その留め金は何なのですか?オーナー」

「それは王家代々の紋章が入った指輪、その指輪で封印されているの、そして、最初に盗んだ人が持っている、つまり、Jinさんが持っているはずですわ」

「えええ~~?じゃ、私達は鍵だけど、Jinさんは指輪から記憶を読めるって事ですか?」

「ええ、たぶん、その指輪をはめて、その蓋に彫ってある呪文の文字の様な物を指輪をはめた指でなぞるんですの、しかも最初にそれを外した人にしか出来ない」

皆、想像を超えた結論に口をぽかんと開けてしばらく呆然としている

「って事は、Jinさんにやってもらわないといけないって事ですか?」

「へぇ、そんな?あなた以外には誰にもわかるはずないじゃないのよ、良かったわよ、あなたがいて」

「でもしばらくJinさんは来ないでしょうね?Nana、連絡先とは聞いてないんですの?」

「いや、あの、教えてくれました、この前」

「じゃ、ちょっと連絡してみなさいよ」

「あの、若様は少なからず私を恨んでいるはず、私が謝罪して、協力してくれる様にお願いしても」

「そうね、Shintaro君、Nanaを取り戻しに来たのかもしれないわね、でもね、それはちゃんと話しをしてみない事には進まないわね」

「そうですよね」

「今から電話してみたら?」相変わらず行動力のあるMiyuさん、が、呼び出しても出る様子は無い

「まだ、仕事中なのかな、明日、また連絡してみます」

「そうね、Jinさんも何か知っているかもしれないですわ、それにJinさんの目的もちゃんと聞いてみた方がいいんじゃないかしら、はっきりしない内は敵視するのもね」

「でも、Nanaを助け出せる方法がわかって良かった、本当に良かったです、ありがとうございます」

Miyuさんがいつもの様にShintaroさんの肩をポンっと叩き、何度も頷いている

目の前の大きな第一歩に皆、真っ直ぐに向かっている、その瞳には不安の欠片もありませんでした

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